千葉県で果物を栽培している50代前半、2代目の農家です。
農業従事者の高齢化が進んでいるので、スマート農業などのIT技術を導入して生産性を高めることが、個人でも組合でも進まず、若手の農家にとっては不便で仕方がありません。
導入できたらもっと効率化できて、結果的に高齢者も私たち若手も農業が楽になるのに…。
寄り合いや組合で話していると、何をするにも年齢が高ければ高いほど新しい技術には抵抗があるように思います。
若手に任せてもらうためには、どう動いていけばいいのでしょうか?
(千葉県・高島さん/仮名・50代)
高田裕司
日本プロ農業総合支援機構(J -PAO)上席コンサルタント
IT導入前と導入後を「見える化」して、理解促進につなげよう
若者が高齢者に何かを説明するときによくあることは、自分が当たり前に知っている知識や仕組みを、専門用語を使って説明してしまうことではないでしょうか。
とくにITの専門用語は難しく、話を聞いている高齢者はまるで理解ができず、導入の話が前に進みません。説明するこちらも、用語から解説しなくてはならず「面倒くさい……」と感じて諦めてしまうというのも「あるある」です。
おすすめしたいのが、言葉で説明、提案するのは最小限におさえて、図や表、イラストなどで「見える化」することです。
「今まで」と「(ITを導入した)これから」を、ITに疎い高齢者にも目で見て分かるような形にして、「これは便利そうだぞ」「面白そうだな」と興味を持ってもらうことが先決です。
相談者さんがそうした資料づくりに自信がないのであれば、導入したいITソフトの開発会社さんなどに協力を仰いでみてもいいかもしれません。
そして周囲の理解を得られ、IT導入が決定した際には、操作も若手である自分たちが責任を持って引き受けることとします。
難しい操作までIT初心者である高齢者や組合に任せるとなると、それを教えるにも時間と労力がかかりますし、教えられる方も苦痛でしかなくさじを投げてしまうことにもなりかねません。
「自分たちは特に何も手を動かさなくて良いのに楽になる、ラッキー」とお得感を持ってもらうことが重要です。
また、全員に説明する前に、組合のリーダーなど地域の中での影響力のある方にまず話を持ちかけて、反対する理由や懸念点、対策についても意見を伺っておくことは有効です。強い人を味方につければ、話が通りやすくなります。
そのほか、いっぺんにではなく、試験的にIT導入を提案するという方法もあるのではないでしょうか。この時、決して無理強いはしません。親しい方に声がけして、興味を持ってくれたら提案をするという程度の草の根運動です。
高齢の農業従事者には保守的な方が多いうえに、自分たちのやり方がいちばんと思って譲らない節があります。
しかし、少しずつ進めて成功体験を共有していくなかで、若者に対する信頼感も芽生え、大きな変革にも合意してもらえる土壌ができていくのではないでしょうか?