中山間地域にある集落で、農業団体(多面的機能支払交付金を受けている共同組織、中山間地域等直接支払交付金を受けている集落協定組織)の役員をやっています。
コロナ禍で話し合う機会が減っていましたが、ようやく寄り合いを行える環境が整ってきました。
今後の集落の農業や生産基盤をどうしていくのかについて話し合い、再来年までに、集落戦略の取りまとめを行わなければなりません。
コロナ前も会議の発言者はごく一部の人たちでしたが、お酒が入る会議後の懇親会では、いろんな意見や本音を聞くことができました。
ただ、そうした機会の復活はまだ難しそうです。
今後の会議では、一人ひとりが自分事として集落内の農業の現状をシビアに捉えながらも、批判や愚痴を言い合うのではなく、前向きに考えていかなければなりません。
多くの人に発言してもらい、前向きに対話を促していくために、会議はどのように進めるのがよいでしょうか?
(福井県・前田泰人さん/仮名・60代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
匿名可能な記入式アンケートなら自由に発言しやすくなります。質問方法も工夫して
この問題も今、日本中で起きている話で、共感する人が多そうな相談ですね。
ただし、これは「コロナがあったから」とか「懇親会がしにくくなったから」などが原因のテーマではないように感じます。
コロナ禍だろうがなかろうが、懇親会が開かれようが中止になろうが、参加者の本音を聴くという点では、これまでにもっと工夫が必要だったのではないかと感じます。
さて、いろいろな会合の場を想像すると、限られた時間内で、たくさんの人がいるなかで、議長から「どなたからでもご自由にご発言を」と促されても、"そりゃぁ本音は喋りにくいよなぁ"と思います。
お酒が入った懇親会だったら本音も出やすいかもしれませんが、翌日には、話した内容をみんな忘れちゃっているなんてことも多いだろうなぁ…と思います。
…とすると、やはり記入式アンケートがいいのではないでしょうか? テーマや内容によっては、匿名での記入もOKにするとか、最近ではWEBで回答するようなことも簡単にできるようになっています。
「実名だと書きにくい」「匿名でもなんとなく誰だか特定されそう」と思うと、なかなか本音が出てこない心配もありますから、集計を外部委託するというのもひとつの手段です。
もうひとつは、議論すべきテーマや内容を絞るべきだと思います。
テーマについても、「10年後の農村をどうするか?」というような漠然とした大きな話ではなく、「10年後、この圃場は誰がどのように耕作するのか?」というような個別具体的な話にすると、発言しやすくなります。
質問の仕方にも工夫が必要かもしれません。同じような内容でも、「後継者は誰ですか?」という聞き方と「お子さんが後継者ですか?」という聞き方では答えやすさが変わってきます。
これは質問の内容によるので、「好きな食べ物はなんですか?」という聞き方よりも、「いちごが好きですか?」「お米とパンではどちらが好きですか?」といった方が、「YES or NO」で答えやすいという具合です。
声を聴く対象者にも工夫が必要ですね。既に集落営農等に参画している人々だけではなく、今は参画していないという後継者世代、あるいは女性陣も対象にしていくべきだと思います。
そうすると「正直言ってこれ以上、集落の仕事で土日をつぶしたくない」というような本音も出てくるはずですが、そういった否定的な意見も受け止めて、尊重するということを明確にしてあげると良いでしょう。
そういった声も書いていいんだよと、むしろそういった声を書いて欲しいんだよと伝えてあげるといいのではないでしょうか。
だけど、そんなことを言ったら、みんなでやりたくないという話になるかもしれませんので、「例えば年間20日までなら参加しても良い」というような譲歩する条件も書いてもらうと良いかもしれませんね。