青森で約30頭の乳牛を育てている酪農家です。
ニュースなどで震災や台風、洪水などの映像が流れるたび、日本はつくづく自然災害が多い国だなと感じています。
そして災害で停電が起きると、酪農は搾乳や生乳の出荷ができなくなって大量の生乳が無駄になってしまうだけでなく、大切に育ててきた乳牛が乳房炎になるなど、生産にも大きく影響します。
そんな災害時の停電問題を解決するために、外部電源を必要としない発電システムを導入して、有事に備える必要があるのではないかと考えるようになりました。
太陽光発電の施設は最近、近隣でもよく見かけるようになりましたが、それ以外にも発電システムはあるのでしょうか?
いろいろ検討したいと思っています。
(青森県・工藤さん/仮名・40代)
加藤武市
加藤技術士事務所
家畜にとって暑さは大敵です。そこで、近年「産業用蓄電システム」が注目されています
牛だけでなく、家畜にとって暑さは大敵です。豚も温度にはとても敏感ですし、ブロイラ―鶏舎では冬場でも常に強制換気をして鶏舎内の環境を維持しているほどですから、夏季に災害などが起きて停電すればそれが1日であってもすべて死んでしまうかもしれません。
大きな災害があると停電が長期にわたることが考えられますので、外部電源を必要としない自立型の発電システムの導入はぜひ検討したいところです。そこで近年注目されているのが、「産業用蓄電システム」です。
産業用蓄電システムは、工場や公共施設、商業施設といった一般住宅以外の建物に設置する蓄電システムを指し、災害等における停電時に必要なバックアップ電源としてだけでなく、平常時には電気料金を削減して省エネにも貢献します。
また産業用蓄電システムの多くは太陽光発電と連携していますが、家庭用と比較して出力・蓄電容量が桁違いに大きく、外部からの電力供給が途絶えても1週間程度の電源を確保できるものが多いようです。
これにより公共施設や企業のBCP(災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画)対策になるのはもちろん、平常時に活用することで電気代を削減し、環境負荷の低減も期待できます。
設置にあたっては、条件を満たせば補助金がおりることもありますので、詳しくは地元の農業改良普及員に問い合わせてみるといいでしょう。