群馬県で、この地域では比較的大規模な採卵の養鶏場を営んでいます。
現在、採卵・養鶏農場は3農場あり、毎日約40万個の卵を主に関東で販売しています。
鶏たちはワイヤー製のケージを連ねた中に、1羽ずつ収容する「バタリーケージ」で100万場を飼養しており、現状ではスタッフが3つある鶏舎の中を歩いて目視で鶏たちの健康を確認しています。
しかしどんなに衛生状態に気を付けていても、残念ながら毎日のように自然死する鶏が出るため、点検には1日のうち3~4時間かかってしまいとても大変です。
かといって、もし死んでしまった個体を見落として発見が遅れれば、死体や卵が腐敗するなどして鶏舎内の衛生状態の悪化にもつながります。
例えば、厳密に1羽ずつ管理するシステムでなくても、鶏舎のどの場所で死骸が多いかがわかるだけでも作業が格段に楽になるのですが、何か良いシステムはないでしょうか。
近年では一次産業のスマート化も進んでいると聞きますので、家庭用のロボット掃除機のように、養鶏場を自動で巡回してくれるロボットなどが開発されていれば理想なのですが…。
(群馬県・町田さん/仮名・50代)
加藤武市
加藤技術士事務所
ロボットが鶏舎内を巡回し死亡鶏を早期発見する「自律走行型ケージ監視システム」があります
鶏舎内における鶏の健康の把握・管理作業はとても重要ですが、バタリーケージを採用している採卵鶏舎内は多層式飼育のため目視の確認が困難な場合が多く、死亡鶏を確認するには時間がかかりますね。
また、薄暗く臭気があり、羽や埃が舞う作業環境も人力による巡回点検の障害となっています。
そこで「株式会社センシンロボティクス」と「大豊産業株式会社」が共同開発した「自律走行型ケージ監視システム」を紹介します。
このシステムは、採卵鶏舎内を自動巡回するロボットが、可視光カメラとサーモカメラによるAI解析で死亡鶏を早期発見して、採卵効率(腐敗卵流出防止)を向上させるというものです。
具体的には、鶏舎内を巡回する自動走行ロボットがまず可視光カメラで各ケージを撮影し、その映像をサーモカメラでAI解析して死亡鶏を検知すると、管理用に登録したスマートフォンに判定結果を即時転送して知らせます。
このシステムを導入することで毎日の巡回作業が不要となり、通知のあった死亡鶏の除去作業のみをすればよくなるため、労力を大幅に軽減することができます。
これまでの実証実験では、90%以上の高精度で斃死鶏を検知するとともに、斃死鶏の検知に要する時間を従来の5分の1に削減できたそうです。
両社では現在も食の安全と作業員の負荷軽減の両立を目指して実証実験を重ねており、将来的には同システムにロボティクス技術を組み合わせた台車の自動走行の実現に取り組みたいと話していますので、今後の開発にも期待がかかります。