学生時代からアウトドアが好きで、一年を通じて休みには山や海に出かけていました。
卒業後は神奈川県でIT関連の仕事をしていましたが、機械と向き合う仕事にだんだんとやりがいを感じなくなり、思い切ってIターンで青森に移住しました。
1年ほど研修し、縁あって廃業した方の鶏舎を手直しして平飼い養鶏300羽ほどを育てています。
まだ3年目で経営は順調とはいえませんが、工夫しながらやっています。
現在の飼料は輸入トウモロコシが中心です。
できるだけエサの経費を抑えたいと考えていたタイミングで、近くに住んでいる農家さんから田んぼを譲る話を持ちかけられました。
高齢で稲作をやめるそうで「補助金が出るから飼料米を作ってみれば?」と言われました。
田んぼの広さは、だいたい1.5ヘクタールほどです。うまく収穫できたら、すべてのエサは飼料用の米や麦でまかなえる計算になります。
自分で飼料を作った方が安心ですし、さらに補助金も出るなんて最高だと思います。
とはいえ慣れない稲作ですから失敗する可能性もありますし、農機具の費用など想定外の出費があるかもしれません。
インターネットで補助金のことを調べてみたのですが、デメリットはあまり出てきませんでした。補助金を使うのに注意する点や失敗例などがあれば教えてほしいです。
(青森県・佐藤さん/仮名・30代)
野方健志
株式会社プロデュース九州
輸入とうもろこしの経費と飼料米導入コストを慎重に比較し試算してみましょう
私は新規就農で養鶏(平飼い養鶏)をスタートする方々(脱サラ営農・複合営農の農業法人・一般企業の飲食店・食品スーパーなどの参入)をコンサルティングしています。
最近では欧米からのアニマルウェルフェア(家畜に寄り添い、痛みやストレスを最小限に抑えるなどの配慮をすること)が畜産業に新たな改革の波を巻き起こしています。
そういった状況ですので、飼育管理の環境整備や飼料の安全性などの取り組みにかかるコストと採算の関係は慎重に考えていく必要があります。
実際、平飼い養鶏で単独飼育羽数が300羽という営農規模では、休耕田を取得して米作りしても採算が合わないと思います。
また、自家配合飼料の原料に飼料米を使っている養鶏場さんからうかがった話ですが、とうもろこしの代用として飼料米を給餌すると「黄身の色合いが白っぽくなる」「濃厚さが薄れた」「配合飼料設計(カロリー計算・栄養構成比など)を見直す必要がある」といった問題点が出てきてしまうようです。
田圃を取得して飼料米の作付けに対する国と県からの補助金は、地方農政局又は地域センターへ「新規需要(飼料米)取組み計画書」を提出し、最終的に生産農家さんと取り扱い農協とが年間契約を締結することになります。
そうなると年途中で飼料米の取引を辞めることはできません。
飼料米の保管施設への設備投資も必要です。
まずは300羽の年間配合飼料費用と飼料米導入にかかるコスト(自ら生産・在庫管理した場合の費用)を慎重に比較試算してみてから判断してください。