たびたび訪れる釣りやマリンレジャーのブームもあって、以前から港にはたくさんのプレジャーボートが停泊しています。
最近とくに困っているのはバブル期以前から放置された船艇で、所有者が亡くなられたり、高齢化して使用しなくなったりしているものが増えているように思います。
自治体でも所有者を掌握できておらず、手を焼いているようです。
最近は保管場所を届け出制にしているので、不法に停泊する船は以前よりは少なくなってきていますが、以前から停泊し続けるボートが多く、停泊場所も不足しているのが現状です。
不法に停泊しているものを一気に処分したいところですが、勝手に処分することもできずに困っています。
こうした放置されている船はどのように対処したら良いのでしょうか?
いい方法があったら教えてください。
(静岡県・村松謹也さん/仮名・60代)
浪川珠乃
一般財団法人漁港漁場漁村総合研究所 上級研究員
放置艇の現状を把握・整理し、漁港管理者に相談を!簡易代執行も考えられます
水域管理者の許可を得ずに係留・保管しているプレジャーボートを「放置艇」と言いますが、これについては以前から漁港や港湾、河川で問題になっています。
こうした放置艇については4年に1度程度、全国で一斉に調査を行っていますが、最新の平成30年(2018年)の調査でも前回調査よりも減っているものの、全国で7万隻もの放置艇が存在している状況です。
国土交通省および水産庁は、こうしたプレジャーボートの放置艇対策を推進するため、「プレジャーボートの適正管理及び利用環境改善のための総合的対策に関する推進計画」を平成25年(2013年)に立案し、おおむね10年後に放置艇をゼロ隻とすることを目標としています。
この計画によると、放置艇対策は地域の特性を考慮し「係留・保管能力の向上」と「規制措置」を両輪に実施し「沈廃船等の撤去・処分及び適正処理」を行うとしています。
具体的には、マリーナ等の既存施設の収容余力の活用や、新たな収容施設の整備(保管能力の向上)、放置等禁止区域の指定や保管場所確保の義務化、簡易代執行・行政代執行等の行政処分(規制措置)の実施などとなります。
簡易代執行とは、水域管理者が各所管法令等の規定に基づいて、所有者不明の船舶を所有者に代わって撤去するもの。
行政代執行は「所有者行政代執行法」に基づいて、所有者が放置艇の撤去又は移動に従わない場合に行政が代わりに撤去や移動を行うことができるものです。
プレジャーボートにより漁港の利用に重大な不都合が生じる場合や危険な場合などには、このような、法に基づいた代執行の制度を活用することができるのではないでしょうか。
また、港湾及び漁港の放置艇に対する規制の効力は、放置等禁止区域を指定することによって生じることとなるため、規制の前段階の措置として放置等禁止区域を設定することも必要かと思います。
一方、プレジャーボートの係留が漁業活動を妨げるおそれが小さい場合などは、係留を許容できる水域において漁港管理者による規制の適用範囲や管理体制の程度を緩やかにする方法もあります。
漁港内に係留を許容できる水域がある場合には、このような方法も考えられるでしょう。
まずは、当該漁港で具体的に困っている状況を把握して整理した上で、都道府県または市町村の漁港管理者に相談することが有効かと思います。