私は、畜産系の大学を出て大学時代の先輩が営む牧場で数年間研修を積んだ後、地元に帰って、実家の近くにある牧場で働いて3年になります。
働き始めてつくづく思うのは、「畜産業を続けていくためには、現場でただ家畜動物たちと向き合っていればいいわけではなく、人工授精師、獣医師、削蹄(そうてい)師といったさまざまな分野の専門職の方たちのサポートで成り立っている」ということ。
しかし、そうした専門職の方たちとは、人づてや口コミで知り合うことが多く、すでに付き合いがある人以外と出会う機会はほとんどないです。
日本の畜産業のためにも、畜産家は、畜産業界を支える専門職の方たちと知り合ったり、情報交換したりする場が必要だと思っています。
ビジネス用語でいうところの異業種交流会の畜産版のようなものをイメージしているのですが、どこかにそういった場はありませんか?
(埼玉県・松村良和さん/仮名・40代)
加藤武市
加藤技術士事務所
畜産関連の団体が主催する研修会などで交流を。自ら働きかける必要もあるのでは
相談者さんが希望する「畜産関係の専門家が集まる場」について、私のこれまで経験したことを思い出しながら挙げてみたいと思います。
私がかつて県の畜産協会に勤務していた時、牛関係の団体では、「酪農協会」「乳牛共進会」「肉用牛協会」があり、その指導をしていました。
また、それらの団体では、県外から専門の講師(獣医師)を招いての研修会を主催することも多く、県内外を問わず広く交流を深めることができました。
各都道府県に設置された「農業改良普及センター」では、酪農家が多い地域であれば、畜産試験場の研究員の指導による牧草サイレージ品評会を行い、飼料作物の品質向上に努めています。
同品評会では、講評結果と比較しながら牧草サイレージの品質を検討できるほか、理想のサイレージについて情報交換をすることもできます。
また福井県には「(公社)ふくい農林水産支援センター」があり、ここでは農林水産研修を行っています。
元気な農林水産業を支えることで地域づくりに寄与するため、農林水産業の従事者、定年帰農者、就業志向者、地域リーダーや県民消費者等を対象に、新技術情報や現場での技術体験・実習などを「いつでも、どこでも、だれでも」、座学と実学を織り交ぜた研修に参加できるよう一体的に実施しています。
さて、相談者の居住地である埼玉県はというと、畜産の農業産出額は全国で中堅どころという土地柄です。
「(一社)埼玉県畜産協会」を見てみますと、各種畜産団体の事務局を持ち、研修や経営相談などを開催しています。
例えば、「畜産女性いきいきネットワーク埼玉」と共同で研修会を行うなどして、畜産振興に積極的に貢献しているようです。
相談者のようなやる気のある若い人が、率先して研修や交流会などを行うことで、生産者のニーズを関係機関に働きかけたり、交流のチャンスをつくったりする必要があるのではないでしょうか。