宮城県で牧場経営を30年ほどやってきています。
大病したことをきっかけに、数年前から牧場長を別の人に任せています。
その方は無口でとっつきにくい部分もありますが、経験値が高いこともあり採用しました。
基本的に現場の作業は牧場長に一任しています。私は入退院を繰り返しているので、数字に関係することだけを気にしています。
牧場長と従業員の関係は悪くないと思いますが、年々、子牛が突然死する数が増え、数字的にも良くない状況になってきたと感じています。
それとなく従業員にヒアリングしてみると、どうやら牧場長が従業員に対して、基本的な教育や指導がしっかりとできていないことが原因のようです。
せっかく経験豊富な牧場長でも、問題が起きてから従業員に指導するのでは後の祭りです。
また、口頭で正しく指示できていない可能性もあります。
従業員に対する指導、トラブル対応が後手後手にならないような人材教育の方法をご教示ください。
(宮城県・佐藤さん/仮名・50代)
加藤武市
加藤技術士事務所
子牛のへい死対策を徹底するために有効な「PCM手法」を活用してみましょう
出生時の子牛のへい死率(突然死する確率)は経産牛で5~10%、初産牛の場合は、それより高くなることがわかっています。
子牛が死亡する原因のうち、最も多いのは下痢症ですから、こまめに排泄便を観察することが、早期発見につながります。
子牛のへい死率を低くするためにも、予防対策が大切であるのは言うまでもありません。
なによりも重要なのが、生まれてから初乳を与えるまでの時間です。
家畜の仕様管理の基本となる「日本飼養標準」によると、初乳は生後4時間以内に1~2ℓ、さらに4~6時間後に2ℓ与えることが推奨されています。
子牛は母乳から免疫を得ることになりますので、出生後できるだけ早いうちに大量に与えるに越したことはありません。
もし初乳が飲めない場合や飲んだ量が不十分な場合は、凍結した初乳を活用します。
また、牛舎の消毒も重要です。動力噴霧器による水洗と、ドロマイト石灰を水で薄めた石灰乳を塗布したりして、清掃消毒を徹底してください。
子牛同士が接触するのを防止する仕切り板を設けるのも有効です。
もちろん、外部から病原菌やウイルスを持ち込まないように長靴を洗浄することにも気を配ってください。
こういった子牛に対する対策は、実際に徹底するのは簡単ではありません。
だからこそ従業員がやりがいや責任感を持って働いてもらうことが必要となります。
そこで、私が利用しているPCM手法を紹介します。
これは、ワークショップなどを導入することにより、プロジェクトの実効性を高める手法です。
PCM手法で「子牛事故を少なくする」を考える場合、以下のような形で実行します。
まず問題をみんなで話し合い、問題の原因を細かい部分まで掘り下げ、解決策を考えていきます。
意見を出し合うことで多角的に問題をあぶり出し、さらにメンバー間で把握・共有できるのがメリットです。
やればやるほど芋づる式に原因(意見)が出てきますので、マインドマップのような図にまとめて可視化しつつ、問題解決の行動と実施したことに対する評価を繰り返していきます。
このときに従業員の意見を積極的に聞き、意思疎通や問題解決への参加意識を深めることが重要です。
こういった部下の⼒を引き出すような「サーバント型リーダーシップ」によって、いままでの状況は改善されていくはずです。