父が牛の肥育農家をしていたため家業を継いだ20代男です。
家業を継いで10年ほど経過しましたが、始めた頃に比べて子牛の値段が高くなっていると感じています。
競り市に行っても、優れた血統の子牛は大規模な農業法人が高値で買い取るので、私たちのような資金力のない個人経営の農家は安くて小さい子牛しか買えません。
周りの肥育農家さんは「子牛の段階で50%は決まる」という話をよくされているので、今後の経営に不安を感じています。
現状は出荷した牛の売値が伸びず、赤字になる事も多いです。
このような状況で個人経営の肥育農家が生き残る術はあるのでしょうか?
いい戦略や方法があれば教えてください。
(宮崎県・久本さん/仮名・29歳)
加藤武市
加藤技術士事務所
国が素牛の増産を進めるために簡易畜舎の補助を行っています。肥育一貫経営を検討してみませんか
肥育農家において、能力の高い系統の人気が高まっていることのほか、素牛価格の高騰など生産コストが上昇する中で、手取りを増やすため枝肉単価の高い上位等級を目指していることなどが背景にあるものとみられます。
子牛の段階でいかに血統の優れた子牛購入が決め手になりますし、もちろん肥育技術も重要であることは言うまでもありません。
家族経営での肥育経営を構築するには、生産費総額のうち、素畜費(子牛の購入費用(については、規模拡大で費用低減が見込まれないものの、肥育経営に繁殖部門も取り込んだ「一貫経営への移行」により素畜費削減の効果を期待できます。
繁殖経営は、軌道に乗るまでにかかる時間の長さと、規模拡大の難しさから供給に時間を要すものです。
また、一貫経営の実現には、繁殖技術の習得や繁殖技術を有する人材の確保が必要となります。
こうした規模拡大または一貫経営の実現のいずれにおいても、一定の資金確保が前提ですが、政府は素牛の増産を進めるために簡易畜舎の補助を行っています。
近くの農業改良普及所へ問い合わせて、肥育と繁殖の一貫経営を検討してみてはいかがでしょうか。
現在、日本が輸出する牛肉はほぼ全量が和牛です。
財務省の貿易統計によると、19年の輸出額は296億7千万円と前年比20%増え、政府が19年の目標に掲げた250億円を2割上回りました。
それでも和牛の輸出量は国内生産量の2~3%にすぎません。
中国向けも2020年内に約20年ぶりに輸出が解禁となり、輸出増拡大が期待されているため、肥育農家の需要自体は継続するものと考えられます。