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無農薬の花卉を育てたい!栽培しやすい種類や注意点を教えて!

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無農薬の花卉を育てたい!栽培しやすい種類や注意点を教えて!

生花を育てている花き農家の一人娘です。普段は両親の手伝いをしながら、花について勉強中の身です。

花は食べるものではないので、これまで当然のように農薬を使って育ててきましたが、最近、インターネットで個人向けに販売するようになり、無農薬を希望される方が意外と多いということがわかりました。

それならば…、と両親とも相談して、無農薬の花を育ててみようじゃないか?という話になりました。

すべての花を無農薬にしたいという訳ではなく、いろいろな種類を取り扱っているなかで、無農薬の花も、ひとつの選択肢になればいいなと思っています。

まずは、一般的によく知られているバラから育ててみたいのですが、他にも育てやすい種類があれば教えてほしいです。

また、無農薬で育てるときにはどんなポイントに気をつけるべきでしょうか?
(岡山県・山本夏美さん/仮名・30代)

大沢智香

Organic Flower Japan(オーガニックフラワー情報サイト)

切り花以外の活用方法も視野に入れた無農薬栽培を目指しては

切り花用のバラを養液栽培されていらっしゃる農家さんからのご相談ですが、現状では、養液栽培での完全無農薬は非常に難しいと思います。

養液栽培で、水分や養分をたくさん与えると、成長も早く、大きな花が咲くようになりますが、一方で病害虫には弱くなります。

また、ハウス内での密植は作業効率は良くなりますが、病害虫が発生しやすい原因のひとつです。

一方で、近年、観光バラ園やガーデニングでは、バラの無農薬栽培が増えています。病害虫に強い品種や栽培方法に関する専門書も登場しています。

通常の栽培方法とは違い、土壌微生物の力を借りて毎年少しずつ株を充実させていく方法で、開花時期も基本的には初夏に一度のみです。

できるだけバラが好む環境(日当たり、風通し、有機土壌など)を作ることで、無農薬を実現しています。

しかし、ガーデニング的な方法では、切り花農家として利益を出すのは難しいと思います。

今のところ、一般の花卉市場では、無農薬栽培であることに付加価値がつかず、手間や時間をかけても、なかなか販売価格に反映させることができません。そのため、すでに無農薬でバラを栽培している生産者は、市場とは違う価値観をつけて、花を提供しています。

ネット販売は顧客が広がりますが、遠距離になればなるほど、配送に関する手間やコストを考慮すると利益に繋がりづらいのではないでしょうか。特に生花は鮮度管理も大変です。

ただ、無農薬栽培のバラは切り花以外にも、活用方法はいろいろとあります。

例えば、エディブルフラワーとして料理やお菓子に花びらを飾ったり、ジャムやお茶への加工のほか、ドライや冷凍の花びら、ローズウォーターやエキスの抽出など化粧品の原料にもなります。

こうした用途の場合は、花首だけで少々キズのあるものも使用できるため、株の負担と花のロスを減らし、長期保存も可能になります。

無農薬で育てやすい品種については、日本に元から自生していた植物は栽培しやすいですが、それらに需要があるかという問題もあります。

また、具体的な栽培方法にはさまざまなやり方があって、環境に左右される部分が大きいので、実際にやってみないとわからない部分もあります。

まずは、すでに栽培経験のある品種のなかから丈夫で育てやすいものを選び、天然由来の忌避剤なども利用しながら、化学農薬を減らしていく低農薬栽培から試してみるのはいかがでしょうか?

新しく始めるものについては、特に切り花用途の場合は、バラと組み合わせしやすい花や葉物、バラが少ない時期に開花する花などが管理・販売しやすいと思います。前述した食品や化粧品などの加工用に考える場合は、食用に適した品種や香りの良い花、ハーブなども相性が良いと思います。

近隣で無農薬野菜を育てる農家さんや、無農薬に関心のある花屋さん、オーガニック関連の販売店や飲食店などと交流して、その地域の気候条件に合った栽培方法などの情報収集を行うこともおすすめです。ひいては販路拡大のチャンスにつながるかもしれません。

欧米では、花の地産地消を呼びかける「スローフラワー運動」が広まっています。地産地消は環境に優しく、地域内の信頼関係づくりや地方経済の活性化も期待できます。

あくまでも考え方のひとつとして参考にしていただき、ぜひご自身の価値観や土地の条件などに合う方法をご検討ください。

無理しすぎず、楽しく取り組んでいただけたらと思います。

最後に、農薬を使わないバラを栽培しているお二人を紹介します。京都・伏見区で「おくだばらえん」を経営している奥田容彦さんは、切花も出荷していて定期的に講習会なども開いています。

また、食用バラの栽培・加工・流通販売を行なっている「ナカイローズファーム」の中井友實榮さんは、「バラの学校」も運営していらっしゃいます。

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八木拓美

ローズベリーファーム

無農薬のバラ栽培は、採算がとれるかどうか見極めて

農業経験がなかった僕は、2003年に菓子折りひとつ下げて、東京・町田市にあるバラ園を訪ねて、ゼロからバラの育成に関する研修を始めました。

当時の師匠から勧められたのが、相談者さんにもおなじみのロックウール栽培です。研修先では、土壌で栽培して消毒などを行う慣行農法をしておりましたが、微生物や油かすなどで土壌を改良するなど、土づくりにはこだわりがありました。

そんな師匠が僕にロックウール栽培を勧めたのは、やはり効率や収量が理由だと思います。20年ほど前の話ですが、当時でも土耕栽培は効率が悪いと考えられていました。

土壌とロックウール、栽培方法は違いますが、どちらも農薬消毒を行う慣行農法に変わりはありません。

ここでご紹介する方法は、慣行農法を前提としていますが、それぞれの方法で育てられたバラには、確実に差があるように思います。

私個人の経験ですが、ロックウール栽培のバラは、3日から5日程で首が折れる、または調子を崩すケースが多かったのですが、土壌栽培のバラは1週間経っても首は折れず、そのままの状態を維持していました。

理由は明確ではありませんが、土壌に棲息する微生物や特有の栄養分などが関係しているのかもしれません。

ふたつの農法の違いをわかりやすく表現すると、土耕栽培のバラは、枯れるというよりは咲いたままドライフラワーになるような感じを想像していただくと良いかもしれません。

ただ、経営ベースで言えば、ロックウール栽培の方が圧倒的なアドバンテージがあると思いますので、どの顧客層を狙うかによって、まったく異なる手法の農業を行う必要があります。手間がかかるというのは、そのまま値段に反映するということですからね。

次に販売について考えたとき、無農薬のバラや花を好む層がいるのはなんとなく想像できますが、この方々が本当に購入するのか?という疑問も残ります。

SDGsが流行しているとは言え、「無農薬の花」は通常よりも非常に高価になるはずですから、果たしてどれくらいの人が実際に購入してくれるのでしょうか?

正直言って僕にはわかりません。さらに踏み込んで言えば、同じように見える無農薬と慣行栽培の花材に、倍の値段をつけて販売した場合、本当に購入してくれるかどうかも疑問です。

無農薬栽培を否定している訳ではありません。

相談者さんは、ご両親が経営という形で商いを行なっていますから、趣味の領域で新しいことを始めようとする際には、花で無農薬が最善の方法かどうかをきちんと見極めた方がいいと思います。

今の市場にそういった需要が本当にあるかどうか?もしくはこれから販路を獲得できるのかどうか?など、無農薬のバラにこだわる確たる理由を見つけてからでも、挑戦するのは遅くはないのではと思います。

家庭菜園など趣味のレベルで畑をやってみたいという方が相手ならば、「無農薬栽培、いいんじゃない?」とお勧めできますが、相談者さんは経営者の立場なので、辛口になってしまいますが、ご理解ください。

相談者さんはバラ農家ですから、バラ栽培に伴う病害虫のリスクは十分すぎるほど理解されていると思います。

慣行農法では病害虫に対する予防線を張れますが、無農薬栽培だとどうしても対処療法になってしまいがちです。経営を考えたとき、この点がネックになります。

僕もかつて、小規模ですが無農薬でバラの栽培を行なっていたのですが、後手に回れば回るほど、病害虫の抑制歯しんどくなりました。

僕の知人でも、園芸や花卉で生計を立てている農家もいますが、薄利多売にはなるけれど、パンジーやビオラなどを栽培して、カゴ売りする方が売り上げがいいと聞きます。でも、この方法も無農薬ではなく、消毒を行う慣行栽培です。

最後になりますが、それでもやはり無農薬の花卉栽培を目指すというのであれば、おそらく方法はひとつ、圧倒的に土づくりにこだわるしかありません。

農薬を使わない土壌の殺菌方法(太陽熱土壌消毒など)や、微生物による土づくり、天然由来の殺菌剤の使用などが必須になります。

僕の考えでは、バラの無農薬はかなりハードルが高いと思うので、最初は例えばハーブの栽培などから始めてみてはいかがでしょうか?

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