群馬で花鉢をハウス栽培して、市場とスーパーの直売所に出している者です。
最近、フレンチレストランでサラダやデザートに食用花(エディブルフラワー)が使われているのをよく見かけるようになり、気になっています。
スーパーの売り場で確認すると、とても少量なのに高価で売られていたので、うちでもやってみたいのですが、観賞用と食用では栽培するのに色々と勝手が異なるでしょうから、何から手を付けようか悩んでいます。
「ビオラ」か「キンギョソウ」あたりなら花鉢として栽培した経験があるし、見た目もカラフルでウケるかなと思っているのですが、実際のところどうなのでしょうか?
花卉農家が作って売り出しやすいエディブルフラワーがあれば、種類と理由を教えてください。
(群馬県・手塚さん/仮名・40代)
宍戸 純
大田花き営業本部商品開発部 部長
栽培しやすいエディブルフラワーは、ナスタチウム(金蓮花)やハーブ類などが代表格
私が勤める「大田花き」は、日本で最も花き類を多く扱う東京都中央卸売市場である大田市場で花きの卸売をしています。
エディブルフラワーは花き類の一部として青果市場で取り扱われており、「大田花き」でもエディブルの取り扱いは一部となりますが、知りえる範囲でお答えしましょう。
エディブルフラワーとしての栽培や取り扱いが容易な品目は、ナスタチウム(金蓮花)のような1年草です。質問者さんが採用を考えているというキンギョソウやビオラも、食用として出荷するのに特に難しい栽培が必要なことはないと思います。
そのほか、ナデシコや、マリーゴールドなどのハーブ類もエディブルの代表格です。
栽培方法については、食用として口に入れるものですから、無農薬栽培が基本になります。
防虫対策も必須ですが、これは食用としての安全性を考えて薬剤に頼らないのはもちろんのこと、見た目を重視するエディブルフラワーにとっては虫食いがあると売価に直結してしまうため、特にていねいに行う必要があります。
鮮度管理については、輸送から消費にいたる過程で途切れることなく低温に保つ物流方式(コールドチェーン)が求められます。目安としては、パックに入れた状態で冷凍して2~3日程度は劣化しないような品質保持が求められています。
市場規模は、コロナ以前はウナギ登りに需要が膨れ上がっていましたが、コロナ禍となった現在は宴会や婚礼での需要が減少したために、やや“花余り”の状態が続いています。
しかしながら、アフターコロナのマーケットはV字回復が必至と見られています。SNS映えする料理やドリンクをはじめ、健康意識の高まりなどと相まってヘルシーイメージを表現するアイテムとしてもより人気が高まることでしょう。
価格については、栽培に関する環境制御の設備投資なども関係して、高止まり状態が続いています。
また、花き栽培からエディブルフラワーの栽培に移行する人は意外と少ないため、私は見た目のクオリティーの高さと味、風味、安全性をすべて兼ね備えた本格的なエディブルのマーケットというのは、実はこれから確立されていくジャンルではないかと予想しています。
アフターコロナのマーケットを見据えれば、有望なマーケットと言えるでしょう。
なお冒頭で前置きした通り、エディブルフラワーは青果市場がメイン市場になっていますので、大田市場だけでなく全国の青果市場から情報収集されることを合わせておすすめいたします。