群馬県にある榛名山麓の梨園で、幸水・豊水、20世紀、長十郎といった特徴の異なる和梨を数種類栽培しています。
私は50代後半で、大学卒業を控えた子供が跡を継ごうかと考えてくれているようなので、できるかぎり継続可能な農業の道筋を整えてあげたいと考えています。
私も梨の栽培方法は先代である実父から教わりました。
そのため、現状では父が行っていた、実を間引いて育てる摘果(てきか)で栽培しているのですが、近所の梨園では蕾の段階で間引く摘蕾(てきらい)にしたほうが収穫量が増えるし、質もよくなると、数年前から摘蕾にしているようです(ただし数値などを比較したわけではなく、感覚的なものだそうです)。
いま摘果で育てているのは先代のやり方を踏襲しているだけなので、収穫量のアップや質の向上につながるのなら、摘蕾に変更したいのですが、実際のところはどちらがよいのでしょうか?
正しい摘蕾の仕方も含めてぜひアドバイスをいただければと思います。
(群馬県・金井さん/仮名・50代)
津田浩利
津田農園 代表
結実しやすい品種は、蕾のうちに摘むと品質向上に効果ありです
相談者さんの「摘蕾が収穫量アップや質の向上につながるのか」という質問については、「品種によるところが大きい」というのが正解だと考えています。
というのも、私の農園では20世紀ナシをメインに栽培しているのですが、20世紀ナシは結実しやすい品種ではないため、蕾の段階で数を減らしてしまうと収穫量がかなり減ってしまう恐れがあります。そのため摘蕾ではなく、摘果を実施しています。
ただし、20世紀ナシの変異種である「おさゴールド」や、20世紀ナシに比べて葉数が少ない赤ナシ系の品種では、もともとの花数が多いため、摘蕾をする場合が多いようです。
摘蕾のやり方としては、花序(=かじょ。花芽のまとまり)の中からいくつかの蕾を落とす場合と、花序ごと落とす場合があります。その際、枝先から2つめまでの花序と、蕾が枝から下向き・上向きについているものは花序ごと落とし、そのほかの花序はいくつかの蕾を落とすと結実しやすいでしょう。
また、摘蕾に適した時期としては、蕾ができてからできるだけ早い段階に行います。これは、前年中に蓄えた養分を大きく育てたい果実にしっかりと行き渡らせるため、つまり、落としてしまう蕾に養分が使われないうちに行うということです。
結実不良の心配の少ない品種については、このように早い段階から果実同士の養分競合を減らせる摘蕾は、果実の品質を向上させるために有益な方法だと思います。