葉に黒色の小さな斑点が出てくる黒星病は、梨の栽培に影響する天敵のような存在です。
うちのは約3haの広さがあり、数種類の和ナシを育てているのですが、20代で梨園を始めてから40年以上にわたって黒星病の発生に悩増されてきました。
特に、人気が高い品種である「幸水」「豊水」「新水」の3水系の梨を育てていると、落ち葉や下草をまめに除去して土壌中の窒素が増えすぎないように気を付けているのに、毎年のように黒星病が発生してしまうのです。
現在の対策としては、殺菌剤の「ベルクートフロアブル」を1,000倍に希釈し、収穫の14日前まで散布しています。
ですが、あまり薬剤の量を増やしたくはないので、土壌改良によって黒星病を防ぐことはできないでしょうか?
(群馬県・柳沢さん/仮名・50歳)
櫻井杏子
株式会社INGEN 代表取締役
表面に病害が現れるので、土壌改良より葉面散布が効果的です
質問者さんもご指摘のとおり、黒星病は葉や果実などの表面に発生するものなので、土壌改良よりは病徴が現れた部分に薬剤を散布する(葉面散布)対処法がより即効性があります。
土壌改良はあくまでも、土壌内に窒素が過剰の場合に行う方法のひとつだと認識したほうがよいでしょう。ただし、紋ぱ病など、地下部で感染する病害の場合は、土壌改良の方が有効です。
黒星病になってしまった場合の葉面散布については「鉄・亜鉛・銅などの金属イオンが入った総合微量要素と、納豆菌を代表とするバチルス菌などの菌資材」がおすすめです。
これらを散布すると、簡単にいえば「水に溶けた鉄・銅・亜鉛などのイオンが、活性酸素をつくって殺菌してくれる」という効果が出ます。
明確な効果はありませんが、散布することによって耐病性がが期待できますので、黒星病の予防という意味でも意味があるでしょう。また、バチルス菌のみの菌資材を葉面散布するのもよいでしょう。
岩崎真也
農学博士、国立研究開発法人研究員
落葉処理の技術や黒星病に強い品種の研究が進んでいるので、参考にしてみてください
ご質問の中にもあるように、ニホンナシ(和梨)の重要病害の一つである黒星病については、すべての主要品種が簡単に侵される性質を持っている(罹病性)とされています。また近年では、天候の不順や薬剤に対する反応が低い耐性菌による黒星病も報告されているようです。
黒星病には、薬剤の散布と落葉の処理方法に注意するのが有効ですが、最近の研究では、被害を軽減するために農作業機械を使った落葉処理の技術も報告されています。
そのポイントは4つあります。
1、農作業機械を使った落葉処理で、落葉の「子のう胞子」の飛散量が減少し生育初期の梨黒星病の発生を軽減できる
2、落葉処理には、乗用草刈機やロータリーなどの農作業機械が使用できる
3、地表面に残る前年の落葉量(残存落葉量)が少ないほど黒星病にかかる確率は低くなる
4、乗用草刈機による落葉の粉砕、ロータリーによる中耕すき込みなど、処理方法によって残存落葉量が少なくなる最適な作業速度、作業回数は異なる
なお、黒斑病と黒星病の両方に強いニホンナシの新品種(「ほしあかり」など)の開発も進んでいて、全国の産地での普及が期待されています。