野菜の露地栽培をしながら、8aほどの小さな果樹園で梨や桃などを作っております。
農地面積が広くないので、いろいろな品種を育てるのは諦めていました。
新たに苗木を植え付けするには時間もかかりますし。
しかし、近い種類の植物同士をつないで、1つの植物として育てる「接ぎ木」という方法があることを知りました。
接ぎ木に挑戦して、収穫できる品種を増やし、できれば早生から晩生まで収穫を実現したい希望を持っています。
梨は接ぎ木しやすいようですが、実際には何種類まで可能なのでしょうか?
(岡山県・石井さん/仮名・30代)
梨の専門家
梨園2代目
たくさんの品種の接ぎ木をすることが可能です
うちの梨園では、父の代から60年以上にわたって3反ほどの土地に50本ほどの梨を育てています。
種類は20世紀、幸水、豊水、新水などが中心です。
お客様からリクエストがあったり、気になる品種と出会ったりしたことをきっかけに、取り扱う品種を増やしてきました。
接ぎ木は、元気な台木(だいぎ/土台となる木)に穂木(ほぎ/違う種類の木の芽や枝)をつなげる技術です。
古くから行われてきておりますので、JAが配る技術書でも説明されていますが、各農園がそれぞれ独自の手法を引き継いできているようです。
接ぎ木できる種類は、台木の樹勢(じゅせい/木の生育状態、元気さ)によるところが大きいでしょう。
やろうと思えば、かなりたくさんの品種を1本の台木に接ぐことができます。
もちろん早生でも晩生でも関係ありません。ただし、梨以外の植物(リンゴなど)を接ぎ木すると失敗することが多くなりますので、あまりおすすめしません。
私は梨園を継いで翌年には接ぎ木を始めましたが、樹勢がある台木を使えば初心者でも比較的失敗は少ないと思います。
接ぎ木のタイミングは、休眠期を終えて樹液の流動が始まる3~4月頃がいいと言われていますが、実際には一年中行うことができます。
わが梨園では、春先には新梢(しんしょう/新しく伸び出た枝のこと)への切り接ぎを、収穫が終わった頃には側枝基部への腹接ぎを…と、収穫に追われる時期を避けて余裕のある時期に接ぎ木を行っています。
初めての場合は、まずは春先に試してみてはいかがでしょうか。
注意点は、穂木の切断方法です。切断面の細胞がつぶされないように、ナイフでスパッと一気に切ってください。簡単に凹凸にカットできる接ぎ木専用のハサミも便利です。
島根県が考案した「えんぴつ削りを使った方法」を試してみるといいかもしれません。
接ぎ木をした後は、雨水や空気が入り込んで腐らないように傷口をしっかりと保護します。
保護する方法は、接ぎ木テープを巻くか、木工用ボンドで覆ってください。
そうすると10日ほどで傷口部分の回復が始まり、2か月ほどで新梢の誘引をすることができるくらいしっかりとくっついてくれます。
接ぎ木した枝からは、3年ほどで果実が採れるようになります。5年ほどかかることもありますので、じっくりと様子を見ていく必要があります。
ご相談者様もぜひ挑戦してみてください。技術面をより深く追求したい場合でしたら、農業普及指導員に相談してみるといいでしょう。いろいろな実例を教えてもらえるはずです。