千葉県で梨農家を営んでいる50代前半の男性です。
最新かびが病原菌となって根を腐らせてしまう「白紋羽病(しろもんぱびょう)」や、謎のウイルスで奇形となる「萎縮病(いしゅくびょう)」など、根本的な解決策がない病気が蔓延して困っています。
梨の木が大きくなり、やっとこれから収穫というタイミングで枯死してしまうので、それまでの苦労が水の泡となってしまっています…。
ほかの農家さんはどんなふうに対応や対策をしているのでしょうか?
私の梨を待っているお客さんに安定的に届けるためにも、病気に負けず毎年予定通りの収量を確保したいです。
ぜひアドバイスをいただけないでしょうか?
(千葉県・石倉さん/仮名・50代)
田中克樹
農と風土の学び舎
梨の白紋羽病や萎縮病の対策は「病原菌を殺す、病原菌を寄せ付けない」です
白紋羽病も萎縮病も、果樹が土中に生息している糸状菌(カビ)に感染することで引き起こされる病気です。症状が悪化すると、白紋羽病では根が、萎縮病では枝や樹が枯れてしまいます。
白紋羽病は糸状菌の一種である白紋羽病菌が原因ですが、この菌は熱に弱く、35℃ほどでほとんどが死滅するため、温水で殺菌する「温水治療法」が有効です。
具体的には、感染した樹の地表面から50℃の温水を「点滴」して土の中にしみ込ませます。これで、土中の温度が35〜45℃程度に保てるため、果樹に影響を与えず、殺菌できます。詳しくは、農研機構発行の「白紋羽病 温水治療マニュアル 2013年度改訂版」を参考にしてください。
一方、萎縮病には、枝を切った後の切り口を保護する方法があります。主成分が酢酸ビニルの薬剤「トップジンMペースト」を切り口に塗ることで、皮膜ができ、感染を防ぎます。
青森県のりんご農家や茨城県の梨農家などは、剪定後の切り口に木工用ボンドを塗る方法を取ることがあります。
木工用ボンドも酢酸ビニルが主成分なので、よくくっついて皮膜をつくり、乾燥を防ぐため、切り口が早くふさがるのと同時に病原菌などの侵入も防げます。
さらに、ボンドを塗ったあとの切り口にアルミホイルをかぶせておくと、紫外線を防ぎ、切り口の温度上昇も防ぐため、効果が高まるとも言われています。
同様に、切り口に墨汁を塗る農家もいます。ススにはものを腐らせない効果があり、樹木の巻き込みがよくなるとされています。墨汁だけだと、固まりやすいので、日本酒など殺菌作用がある液体を混ぜて塗るとよいそうです(墨汁:日本酒の割合は1:2)。
他にも同じくススが主成分で、樹脂が少量混じった炭液剤を使う農家もいます。
季節を問わず、症状に気付いたらすぐ病気の部分を削って対策すれば、よほど重症でない限りは萎縮病から回復するようです。