栃木県で幸水や豊水、さらに栃木県の品種「にっこり」などを7月から12月にかけて収穫しています。
育てるにあたって、もっとも気を配っているのが黒星病を防ぐことです。
毎年、収穫後の落ち葉処理はきっちり行い、春先以降は天気のタイミングを見計らって農薬散布を行ってきました。
しかし、最近は異常気象のせいで温度変化が激しくなった影響なのか、黒星病の発生予測が外れることが多くなってしまいました。
「にっこり」は黒星病に強い品種なので深刻な被害はありませんが、幸水や豊水の黒星病の被害が増えてきています。
なんとか食い止めたいのですが、いままで培ってきた経験が思うように活かされなくなってしまったので、どうしたものかと困り果てています。いい方法があれば、教えてください。
(栃木県・山崎さん/仮名・60代)
千葉県ナシ栽培スマ農コンソ
NTTデータ研究所/千葉県農林総合研究センター
梨の黒星病の「危険日」が把握できるアプリを開発中です
梨は千葉県が誇る名産品であり、その生産量は国内ナンバー1を誇っています。その梨を長年にわたり脅威に晒しているのが黒星病です。
黒星病については、かねてより梨農家さんから「なんとか防除できないものか」「防除できる仕組みはないのか」「このままじゃ離農するしかない」などと相談を受けてきました。
黒星病はカビが原因の病気です。このカビは気温が15~20度で活発化し、5月に感染→湿度が高い6~7月の梅雨時期には梨の果実の生命を脅かします。
私たちはこの「気温」と「湿度」に着目しました。どちらの条件も整っているタイミングで防除すれば、そもそも黒星病に犯されないだろうと。
そこで開発したのが、黒星病の発生の危険度を予測する「梨なび」です。これは、薬剤による防除のタイミングを推測するシステムで、アメダスデータと気象情報(温度、湿度、 照度、雨量、風向、 風速 )、葉面濡れ (葉表面の濡れ)等を千葉市緑区・鎌ヶ谷市・市川市・船橋市の実証地域(圃場)で管理するところからスタートしました。
令和元年からは「梨なびアプリ」開発に着手し、農薬を散布した日、散布した農薬の残効期間・農薬の散布にベストな時期、農薬を散布したらNGな日などをひとつの画面で把握できるようにしました。
「梨なびアプリ」を使えば、黒星病の感染リスクが高い「危険日」に気がつき、適切な防除タイミングを把握し、感染拡大を防ぐことができます。ピンポイントの農薬配布時期を知ることもできるので、農薬の節約にもつながります。
とはいえ開発途中のため、現在は千葉県農林総合研究センターやNTTデータ経営研究所などでつくるコンソーシアムで、市川と成田の圃場で日々のデータをとって、その実証を確認している最中です。
現在は千葉県限定ではありますが、将来的には千葉県以外でも応用できると考えています。個々の農家さんに提供するまでには至っていませんが、県による支援や、近隣梨農家さんとの共同での導入も視野に入れていただけると幸いです。