15反ほどの畑で桃農家をしているのですが、毎年、12月から翌年2月の間に行う剪定時に、畑全体で2トン車5台分ほどの枝が出てしまいます。
その処分になかなか骨が折れます。
いまは畑の端に仮置きし、ある程度の量になったらまとめて自治体の処分場に持ち込むか、業者に頼んで回収してもらっています。
しかし、 どちらもそれなりにお金がかかりますし、資源としてもったいないなと感じています。
「誰かに利用してもらうことで儲けられれば一石二鳥だ」とも思うのですが、なかなか良い販売方法が思いつきません。
大量の枝を移動させるのは面倒なので、置き場所はそのままにして、インターネットで販売することができればベストなのですが……。
桃の枝は乾燥させるとよく燃えるので、最近流行りのキャンプ用にチップにして売れば、需要はありそうです。また、ストーブの焚き付け用にも使えると聞きます。
しかし、加工して一年中売るほどの量はありません。何かよいアイデアはありませんか?
(群馬県・青木さん/仮名・50代)
根市大樹
合同会社南部どき 代表
桃の剪定枝を商品化するだけでなく、地域のブランド化や加工品の開発も検討してみては
私どもでお役に立てるのであれば、剪定枝の現状についてお知らせいたします。
弊社がある青森県南部町は果物を売りにしている町なのですが、農家の剪定枝は冬場の回収や廃棄が課題となっていました。
弊社ではそれを解決することで農家寿命を少しでも長くしたいと考え、果樹枝を使った燻製の製造・販売事業を始めました。
南部町の強みは「5キロメートル四方で多様な果物を生産している」ということにあります。
年間を通じて1〜4月まではイチゴ、5〜11月までは、それぞれ梅、さくらんぼ、ブルーベリー、桃、梨、りんご、ぶどう、西洋梨といった、果物狩り体験が楽しめます。
しかしその強みの裏側に、「広い園地で剪定を行うことで山のように剪定枝が出て、回収の手間がかかる。しかも、剪定枝はただ焼却処分されるだけ」という課題がありました。
その課題を解消するために弊社は設立されたのです。
剪定枝を燻製チップとして活用する場合、弊社では、まず障がい者や高齢者就労などに依頼して無償で回収し、自社でチップ化・燻製加工しています。
また、「地元の剪定枝を活用している」ことを付加価値として販売しているほか、除草用の養生や公園のぬかるみ対策などにも活用しています。
一般的にはあまり使わない果樹の剪定枝も、それぞれの特徴を生かせばさまざまな商品開発が可能になります。
すでにさくらんぼ、ぶどう、梅のほか、梨やりんごなどさまざまな剪定枝チップが商品化されていますし、相談者さんが栽培している桃も、もちろんチップ化することが可能です。
剪定枝でチップを作る際の課題は、細かい枝の樹皮ごとチップ化するためにヤニ分が多く、長時間燻す一般的な燻製では食材に余分な雑味や苦みが付きやすくなるという点です。
弊社ではその課題を解決するため、プラスに帯電した食品にイオン化された煙のマイナス粒子を静電気で吸い寄せて燻煙する「電子スモーク」を導入しました。
これにより、余分なヤニ分などを極力少なくすることができ、しかも微弱電流使用のため電気代もごくわずかで済み、商品化が加速しました。
またこの「電子スモーク」なら、生鮮食品を約5~10分で加熱せずに(生の状態で)燻製処理できるので、タンパク質の変質を最小限に抑えることが可能です。
また乳酸菌を殺さないため柔らかなスモークチーズができます。
現在、弊社「南部どき」では、「スモークナッツ」「しめ鯖の生ハム」「鮭トバの燻製」などの商品化にも取り組んでいます。
相談者さんも剪定枝の商品化で燻煙チップを考えているのなら「電子スモーク」の導入を検討してほかの加工品の開発を検討されてみてはどうでしょうか。