私の家は祖父の代から続く梨農家です。私は3姉妹の長女で、30代になってから会社員をしている今の夫と結婚して家を出ました。
しかし今から5年前、私が50歳になった年に父が亡くなったとき、祖父と父が頑張って作ってきた梨畑を人手に渡したくない一心で、後を継ぎました。
私は20代のころから父の手伝いで畑に出てはいたものの、父に言われるがままに作業をしてきたので、梨栽培の技術や知識はかなり未熟です。
そのため今は、父が遺した作業日誌を見てもわからないことがあれば、近所で梨農家を営んでいる父の知り合い(70代)に相談しています。
とはいえ、基本的には商売敵のような関係なので、病害虫の情報交換以外で連絡をするとあまり歓迎されていない感じがして、気が引けています……。
そんななか、今年もなんとか収穫期が終わりに近づいたため「そろそろ来年に備えて剪定をしようかな」と動き出したところ、脇枝がたくさん伸びている状態が畑のあちこちで発生していることに気が付きました。
父の後を継いで5年目になりますが、こんなことはこれまでにはなかったので、どの枝を残せばいいかまったくわからず困惑しています。
ちなみにうちの畑では、父の代から毎年2回、JAで土壌検査をしています。
直近の検査では少しカルシウム量が少ないと指摘されたので、カルシウム資材は撒いてみたのですが、それで改善できるのかどうか……。
来年また同じ状況になるのを防ぐためにも、その原因と対処法を教えてもらえないでしょうか?
(群馬県・佐藤さん/仮名・50代)
橋本哲弥
橋本梨園
地域内で同じ課題を共有できる仲間を作り、WIN-WINの関係性を作り上げましょう
今回のご質問については、率直に申しますと、この場では答えようがありません。
内容だけで判断すると、質問者さんが言うようにカルシウム不足の可能性もありますが、その他の可能性も否定できません。
そのため、普及指導員さんや営農指導員さんに現地で直接、問題の木を見てもらって、対策を考えるべきだと思います。
私も梨園を経営しており、自分の剪定技術や科学的な見地に基づいて、梨栽培に関する記事を何度も書いてきましたが、今回については軽々と答えることで、逆に悪い影響をおよぼしかねないと思っています。
土壌環境はさまざまな要因が複雑に影響しあってバランスがとれています。
そのバランスは、ヘタをすれば1年で崩れてしまいますが、元に戻すためには何年もの時間がかかります。
ですからまずは、現地の状況を常日頃から観察しているプロの意見に耳を傾けてみてください。
今回の相談内容について、私からアドバイスすることができるとすれば、栽培管理を学んでいくうえでの人間関係に関してでしょうか。
というのも、梨に限らず作物を栽培していく際には、その土地ごとの特徴(気候・土壌環境などの栽培環境や樹体管理の慣習)もありますので、同じ地域の先輩や仲間ともっと話をして、情報交換をしていくことがとても大切です。
そのためにも、商売敵としてではなく、同じ課題を共有できる仲間としての関係性を構築していくことをおすすめします。
年に何回か収穫期がある野菜や花きとは異なり、梨をはじめとした果樹の多くは、1年に1回しか収穫期がありません。
その1回を少しでも質の良いものにするために、こちらから胸襟を開いて病害虫以外の相談も持ちかけてみてはいかがでしょうか。
地域で WINーWINの関係性ができることを期待しております。