個人事業主として1人で12ヘクタールの稲作経営をしています。繁忙期にはさすがに1人では手が回らないので、アルバイトを雇っています。
特に、田植えや収穫の時期、また田んぼの畦や土手の草刈りが忙しい夏場の時期には、期間限定(田植え・収穫時期は2週間ほど、草刈り作業は1ヶ月ほど)で1、2名のアルバイトを雇っています。
なかなかアルバイトが見つからない場合は、シルバー人材センターに頼むこともあります。
自分自身はJAを通じて労災保険に加入していますが、アルバイトの人たちはこれまで労災保険に加入したことはありません。
アルバイトの人たちが高齢な場合も多いことから、万が一ケガをした場合のことを考えるととても不安になります。
アルバイトの場合には労災保険は強制加入ではないと思いますが、入ったほうがよいでしょうか?
(群馬県・新井聡さん/仮名・60代)
中村雅和
いのしし社会保険労務士事務所所長/農業労災事務センター常務理事/社会保険労務士
雇うアルバイトの労災保険は、強制加入となる可能性が高いと思われます
農業における労災保険加入は他の産業と違って特殊な扱いになります。
他産業では1人でも人を雇うと労災保険は強制加入になります。一方で農業では法人化した場合や常時5人以上雇った場合には労災保険は強制加入ですが、個人事業であれば常時4人までは労災保険への加入は任意となります。
ただし、これには特例があり、農家本人が労災保険に特別加入している場合には、雇う労働者の労災保険も強制加入に切り替わります。
なぜかというと、労災保険は本来、現場で働く労働者のためのものなので、雇い主だけ労災保険に入って、労働者を放ったらかしにするとしたら、制度の趣旨からして本末転倒になるからです。
したがって、ご質問者のケースでは、雇うアルバイトの労災保険は強制加入となる可能性が高いと思われます。
また、こうした法律面からだけでなく、農業分野は他産業と比べても労災事故が起こりやすい実態があり、稲作でもトラクターやコンバイン、田植え機、草刈機など危険な道具を使う場面も多いため、万が一事故が起こった時のために日頃から備えておいた方がいいでしょう。
労災事故が起こったときに雇い主が負担しなければならないのは、治療費や休業した時の補償金、障害が残ったときの補償金、不幸にして亡くなってしまった場合の遺族への補償金など、多岐にわたります。
加入していなかったばかりに、多額の賠償を請求されて全額自腹を余儀なくされるケースも十分に想定されます。
以上のように、法律面でも農作業の実態面でも労災保険の加入は必須です。
詳しい手続きに関しては、所轄の労働基準監督署に行けば懇切丁寧に教えてくれるはずです。早めに加入の取り組みを行うようお勧めいたします。