香川県西部の漁師で、カキの養殖を始めたものです。去年はうまくいったものの、今年育てた牡蠣は身が小さくなってしまいました。
また、先輩漁師から収穫量も年によっては3倍~4倍の違いがあると聞きました。
今年は収穫量が少なかったので価格をあげたいなと思っていたのですが、市場やお客さんが価格が毎年変わることを好まないということで、昔から販売価格は変えられないそうです。
漁業だけでなく一次産業全体の問題なのかもしれませんが、いい値付けをしてもらうには、何か方法がないのでしょうか。
(香川県・吉田さん/仮名・30代)
馬場 治
東京海洋大学名誉教授
他地域や他生産者との差別化で価格が高くても消費者に求められるようにすることが大事です
水産物や野菜、果物など、需給関係によって価格が決定される商品では、生産量の変化に伴う価格変動は不可避です。
商品の多くは日々価格変動する卸売市場を経由するため、消費者の購入価格が変動するのが本来の姿です。
一方で、消費者はどんな状況でも低価格・一定価格を好むため、消費者の多くが商品を購入する量販店は、それに応えるために可能な限り一定価格での仕入れをしようとします。
このような値付け状況を回避しようとする生産者や地域では、ブランド化などの努力で、他地域や他生産者の商品と差別化を図り、価格が高くても消費者がその商品を欲しがるようにしています。
しかし、このような差別化も他の生産者が同じように取り組むようになると互いに差別化が難しくなるので、その努力にきりがないことも確かです。
商品の価格は、その商品の売り先によって異なるので、「一般家庭消費向けとするか」あるいは「外食店消費向けにするか」などによって異なり、売り先に応じて商品の品質や作り方も異なってきます。
最近、農水省ではとくに養殖業において、生産者は市場での需要に対応した生産(マーケットイン型の生産)を行うように指導しています。
従来のように、とくに市場の需要を気にすることなく生産者側の都合で生産し、販売する生産(プロダクトアウト型の生産)では、生産者の期待する価格は実現しないと指摘されています。
牡蠣については最近ではシングルシードという生食向けの生産方式がブームであり、各地でその生産方式での生産が広がっています。
オイスターバーなどでの消費に期待しての取組です。
これも、カキ消費に関する需要の変化に対応したもので、生産者はこのような市場の動きを見ながら差別化可能な生産を考えることで価格が高くても選ばれるようにする必要があると言えます。