menu
Pull to refresh

漁場が年々遠くなり、原油価格も高騰している。どのように利益を確保すればいい?

文字サイズ

拡大 標準

漁場が年々遠くなり、原油価格も高騰している。どのように利益を確保すればいい?

長崎県のまき網漁師です。近年、黒潮の影響かあるいは温暖化による影響なのか、近海に魚がいなくなっています。

以前は近海でもたくさんの魚が獲れていたのですが、今では遠洋まで出ていかないと、魚がいません。

その影響で、年々漁場が遠くなり、船で走る距離が延びています。さらに、追い打ちをかけるように原油価格が高騰しています。

そうした状況にも関わらず、私たちが漁獲した魚の値段はほとんど変わりません。これまで以上に燃料代が必要になっている分、魚の単価が上がればいいのですが、そうではないので、利益確保が非常に難しいです。

近海に魚がいなくなっていることや原油価格の高騰など、私たち漁師の努力ではどうすることもできないなか、今後どのようにして安定的に利益を確保していけばいいのでしょうか。
(長崎県・田之上正平さん/仮名・40代)

馬場 治

東京海洋大学名誉教授

同じ漁場で操業する漁船間で操業協定を結び、協調して利益を確保しましょう

外的環境(黒潮の変化、温暖化、燃油高騰)による利益減少に対して、個別の取り組みで対応する方法と集団的取り組みで対応する方法のふたつがあります。

まず、個別の取り組みとしては、省エネ型の機関に変更する方法や省エネ船型に変更する方法が考えられます。

しかし、いずれも大きな投資を伴い、簡単にできるものではありません。

これを実現するために、現在国では「もうかる漁業」という事業によって、上記のような変更を伴う代船建造や改修を行うための補助金を出しています。

まき網では、大臣許可の大中型まき網を中心に相当数の建造や改修が行われてきました。

他方、集団で取り組む方法としては、かなり理想論的な取り組みではありますが、実際に行われている方法について述べたいと思います。

漁場が遠くなって燃油費がかさむことへの対応策として、燃料消費を抑えること、すなわち機関の回転数を下げて低速走行で燃料消費量を抑える方法しかありません。

しかし、漁船同士が漁獲競争をしている通常の操業下では、自分だけが回転数を落として速度を遅くすることは競争を諦めることになるので、できないと思います。

このような状況下で時に導入される対応策として、同じ漁場で操業する漁船(船団)間でなんらかの操業協定を結び、機関の回転数を抑える工夫をすることがあります。

操業協定には、漁場探索を共同で行い、漁場情報を船団間で共有し、漁場探索に要する燃油費を削減する方法や、水揚時の入港順をローテーションにして、水揚順の競争を避けるなどの方法があります。

上記のような方法は、国の補助を受けて代船建造などをする場合の条件としても求められ、実際に取り組んでいる例があり、一定の燃油消費量削減の効果が認められています(削減率10%などの数値目標が課され、ほぼ実現できています)。

私の個人的な考え方としては、これからの漁業では、従来のような漁船(船団)間競争をして勝ち残っても、その経営体が将来にわたって存続できるかは、はなはだ疑問です。

漁船数の減少は、結果的に魚群の探索能力の全体的な低下を招き、経費の増加に繋がります。

競争をしてきた漁業者からすれば、協調して生き残っていくという考え方は受け入れがたいかも知れませんが、これからはそうすることで互いの利益を確保していくという方向を考えるべきだと思います。

シェア

COMMENT

この記事を誰かに教える /⾃分に送る

お気に⼊りに登録
ツイート
シェア
送る
NOTE

会員登録と⼀緒に公式LINEに登録すると便利です。

業界ニュースやイベント情報などが届きます。

友だち追加

関連するお悩み

ブリなど養殖魚の餌代が高騰している。昆虫をエサにできると聞いたのですが本当ですか?
AIが漁場を教えてくれるという「トリトンの矛」とはどんなものですか?
底引き網の指定された漁場の区域を変更する方法はありますか?

あなたの悩み
YUIMEで解決しませんか??

農業や漁業に関する悩みや疑問や不安、
悩みごとについておよせください。
いただいた投稿から選考した相談内容について、
編集部や専⾨家がお答えします。

Loading...