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化学肥料の代わりにボカシ肥料を検討中。実際の効果はどうなの?

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化学肥料の代わりにボカシ肥料を検討中。実際の効果はどうなの?

一般野菜をJAや市場に出荷している40代の農家です。現在、なすのハウス栽培に力を入れています。

最近、有機栽培に興味が出てきて、時間のある時に土づくりと肥料、農薬について調べています。今のところは、JAに勧められた通りの化学肥料や農薬を使っています。

結果としては、化学肥料や農薬のおかげで、比較的安定した生産を確保してこられました。しかし、世の中が健康や環境問題への関心が高まる中で、このままでいいのかな?と疑問を覚え始めました。

今後はできる限り減農薬にシフトし、有機栽培にも挑戦したいと思っています。

土づくりについて、肥料に代わるボカシ肥料(有機肥料に土やモミガラを混ぜて発酵させたもの)は有効だと思うのですが、実際はどうなのでしょう。特に、菌液などの発酵に関しては疑念を持っています。
(神奈川県・松浦さん/仮名・45歳)

櫻井杏子

株式会社INGEN 代表取締役

即効性があり悪影響の少ないボカシ肥料は有効ですが、自作には慣れが必要です

ボカシ肥料は発酵物のため品質にばらつきがありますが、効果はあります。効果は主にふたつあり、「アミノ酸や糖などの植物が吸収しやすい形の栄養を与えられること」「善玉微生物を増やすこと」です。

速効性が高い化成肥料もありますが、土が固くなったり、pH(水素イオン指数)の調整が必要だったりします。その点、ボカシ肥料には、速効性がありつつも、土壌に悪影響を与えにくいメリットがあります。

微生物については、きゅう糞を主原料とする通常の堆肥と、米ぬかや油かすなどを主原料とするボカシ肥料では、原料も発酵温度も違うので、増える菌もやや変わってきます。パン作りや味噌づくりでも、温度管理を間違えたり、雑菌が入ったりすれば、うまく発酵せず腐ることがあります。

「腐る」とは目的と違う菌が増えることです。つまり、「化学的根拠が薄い」のではなく、パンや味噌づくりと同様に慣れが必要なのです。

そのため料理と同じように、最初はできあいのものを買う、少ない量からボカシ肥料づくりを練習して、徐々に本圃全体に使える量をつくってみてはいかがですか?

また、できあいのボカシ肥料を使っても、土壌微生物性が改善していないという場合もあります。その場合は地温が原因で、冬場では他の菌が優勢になっているからかもしれません。東海、四国、中国地方などでは冬場でも菌が増えますが、東北地方などでは春~秋の使用がおすすめです。

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村山邦彦

伊賀ベジタブルファーム株式会社

有機肥料の利点は多いですが、化学肥料から切り替える際には注意が必要です

時代の流れの中で、化成肥料や農薬を減らしていくことが求められています。有機栽培には大きな可能性がありますが、技術面では次のような点に注意してください。

1、肥料について
まず化成肥料を有機肥料(ボカシ肥料、堆肥)に変える場合に気を付けるべきことがいくつかあります。

ひとつは、化成肥料が単純な成分で即効性があるのに対し、有機物は利用する資材(材料)によって内容が多種多様で、微生物に分解されてはじめて効果を発揮するという点です。使用する肥料にどれくらいの肥料成分(窒素)が含まれていて、そのうち実際の効果が出るのはどれくらいの割合なのか、確認しておきましょう。

たとえば、鶏糞のボカシ肥料なら窒素分は4%くらいですが、実効成分(効果がある成分)は、そのうち約50%くらいです。8%の窒素成分を含む化学肥料の「化成肥料888」と比べれば、同じ量を投入した際の肥料効果は1/4程度になります。

これが牛糞の堆肥だと、店舗で購入する資材では窒素分1%とうたわれていますが、実際に肥料として効くのはほんのわずか、おそらく20%程度でしょう。先ほどの化成肥料との比較でいえば1/40となります!

なお、有機肥料の場合、化成肥料のように単一の成分ではなく、さまざまな成分が含まれています。例えば採卵鶏のボカシ肥料を使う場合、卵の殻をつくらせるために飼料としてたくさんの牡蠣殻を食べさせますから、石灰分が大量に含まれます。

こうした想定外の養分投入が過剰になって蓄積して、土壌がアルカリ化することがよくあるので、注意してください。そうした失敗をしないためには、「施肥設計」を行うことが重要で、最近は植物が必要とする成分の量を計算して施肥の際に調整するのが一般的になってきています。

2、土づくりについて
土壌改良のため、たい肥などの有機物や微生物を導入するのは、有機栽培、慣行栽培問わず共通の技術です。その際、何を目指して改良を行うのかを明確にしておくことが大切。土中の有機物や微生物の種類、量がどうなっているか、それをどのように改善したいのかを整理しておきしましょう。

また、有機物が最終的に鉱物などとまじりあってできる「腐植(微生物の作用によりできた黒褐色の物質)」が、土壌の団粒構造(土壌の粒子が集まって固まりなっているもの)をつくるうえで非常に重要とされています。腐植は水はけ、水持ちなどの「物理性」や、長期にわたってゆっくり養分を提供する「地力」と深く関わっているといわれています。

3、農薬について
「有機栽培」に切り替える場合、農薬の使用をどう代変えしていくかが大きな課題となります。ネットをつかったり、防蛾灯を設置したり、あるいは天敵昆虫を導入するなど、さまざまな代替策が提案されており、これらは総称して「IPM技術」と呼ばれています。

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