京都で、オリーブ農家を仲間と共同で経営しています。
始めたのは50代からで、早期退職してのスタートです。
きっかけは、周辺で生産者の高齢化によって休耕地が増えてしまい、地域のためになればと考えたからです。
放っておくと荒れるだけの土地を格安でお借りできたことも後押しになりました。
オリーブ栽培での地域活性化や、第二の人生の生きがい作りを目標にしていたので、活動自体は順調です。
しかし、若手の後継者を育てられないまま現在に至ります。
夢を抱いて活動を始めて10年ほどになりますが、全員が高齢者となり息切れ気味。
まさか高齢化問題を解決しょうと思った私たち自身が、高齢化問題に突き当たるとは思っていませんでした。
オリーブは若い人にも受け入れられやすいはずです。
オリーブオイルやオリーブ茶をはじめ、さまざまな商品化もできると思います。
オリーブの魅力を一緒に発信してくれる若者を振り向かせたいのです。
自治体に相談しても、なかなかうまくいきません。若者に移住や定住してもらい、後継者不足を解消させた成功事例が知りたいです。
(京都府・浜口さん/仮名・50代)
山田実加
名古屋文化短期大学 フードビジネス専攻 教授/ パティシエ
「働く」と「暮らし」の両面を伝えることが効果的
私は小豆島のオリーブ産業の研究を行っており、移住者についての調査を行いました。この調査結果が少しでも悩み解決のお役に立てれば幸いです。
当然といえばそうなのですが、農業をなりわいにすることは、「働く」と「暮らし」が一緒になるということです。とくにIターン(出身地以外の場所に移住して働くこと)を検討している人々の多くは、「働く」と「暮らし」が一緒になることをよく理解できていません。
アンケートによると、実際に住んでみて発見する暮らしが大きな魅力だと実感される方が多いよう見受けられました。
つまり、若者を振り向かせたい場合、仕事の魅力(オリーブ)だけをアピールしても届きにくいようです。仕事の魅力だけでを伝えるのではなく、オリーブと共に暮らす魅力やさまざまな地域情報なども含めて伝えることが有効だと考えられます。
次に大切になるのは、「働く」と「暮らし」のサポート。小豆島では、IターンやUターン(就職などで新しい居住地に移った後、生まれ育った出身地に戻ること)に対して、自治体(住まい・子育て環境・医療)、地域(祭り・生活)、仕事(ノウハウ)、金融(支援)などさまざまなサポートが行われています。
実際に移住したいと考えた時、障害になる要因はひとつだけではありません。小豆島町では、さまざまな立場の組織が役割分担して、移住者のサポートに対応しています。
移住希望者のよくある相談や移住者のリアルな声は参考になると思います。
また、短期間の農業体験や収穫アルバイトがIターンやUターンのきっかけになるケースもあります。小規模の農家さんでも期間限定のアルバイトならば、比較的取り入れやすいはずです。少し回り道に感じてしまうかもしれませんが、地域の情報発信の意味も含めて取り組んでみてはいかがでしょう。小豆島オリーブ産業の場合は、収穫の時期(10〜11月頃)の約1ヶ月間限定で募集される農家さんが多いようです。
山田典章
山田オリーブ園(園主)
ブログでオリーブのある生活を伝えてみてください
本質的な話をしますと、若い人に移住やオリーブ栽培することへの押売りはできません。呼びかけてもなかなか集まらないのが多くの地域の現状だと思います。結局は住みたい、やってみたいと思ってもらわないといけないでしょう。
そもそも自分たちがオリーブの仕事を面白いと思ってること、稼げていること、そして、それが見えていることが大切です。とくに若い人が農業を始めるならば、稼げることが最も重要な関心事だと思います。
私のオリーブ園では、毎年収穫シーズンに手伝いにきてくれる人が15人ほどいて、その中の1人か2人は島内外でオリーブ農家として就農しています。大々的に募集を呼びかけているわけではありませんが、すでに今年の申し込みも20人ほど来ていて、新規の方は2〜3人程度しかいません。
では、なぜ人が来てくれるのでしょうか。それは、オリーブ栽培を始めた頃から8年間ほぼ毎日書いているブログが後押しとなっています。
とにかく毎日、他愛もない思ったことや感じたことを書いて投稿することを心がけています。書くハードルを下げないと、更新が続けられないので、あまり気負い過ぎずに続けています。ブログの効果を感じるようになるまでには、3年ほどかかりました。ブログ開設当初は10人ぐらいにしか読まれていませんでしたが、今では700人から800人が読んでくれています。
いよいよオリーブオイルを販売することになった時には、ブログの読者が商品を買ってくれました。販売するまでの過程を読んでくれていたので、親近感を持ってくれていたと思います。そもそもブログはオリーブオイル販売が目的でしたが、予想外なことに収穫を手伝いに来てくれる人も現れはじめました。そのため、発信を続けることは、とても大事だと思います。
さらに、文章は自分で書くのが一番いいです。文章はうまくなくてもいいんです。本人の肉声の方がリアルで面白くなります。いいことばかりじゃなく、うまくいかなかったことも隠すことなく、ありのままに書きましょう。
農業一本で稼いでなくても、収入や農業に対する考え方、日常の作業の様子など、できるだけ本当のことを伝えた方が、同じような感覚の人には響くことがあります。引き継いでもらうのが若者ではなく、早期退職した人でもいいわけですから。
まずは自分たちがオリーブ栽培を楽しんで、それを発信し続けてみてはどうでしょうか。