2年前に結婚をし、それをきっかけに家業をついで農園をやっています。農地の規模はさほど大きくなく、無理のない範囲で季節の露地野菜を作っています。
妻の家族に障がい者がいることから、農福連携に興味を持つようになりました。現在は農福連携を広げていきたいと挑戦しているところです。
はじめは身内だけで作物の箱詰めなどの単純作業を手伝ってもらっていましたが、手応えを感じたので、現在は数名の障がい者に手伝ってもらうようになりました。
もっと多くの消費者に、農福連携に対する理解を深めてもらいたいので、パッケージに「障がい者が働いている」ことを示すイラストを印刷したり、POPやチラシなどで農福連携について説明したり、収益の一部を福祉施設に寄付することを説明したりして、道の駅で販売を開始してみました。
しかし、農福連携の告知が強烈だったせいか、売上が落ちてしまいました。
農業仲間からは「野菜の味をちゃんとアピールしないからだ」などと指摘されました。今から考えると反省すべき点があります。
しかし、「野菜の味」と「農福連携の魅力」の素晴らしさを伝えたい気持ちに変わりはありません。両方をアピールできて、買い手の心を動かすような販売方法のアイディアはありませんか?
(関東・山口さん/仮名・30代)
本多英二
aula brand design(アウラブランドデザイン)
農福連携のPRは商品では行わず、農園の活動として周知させましょう
企業の成績を上げるための方策は大きく2つに分けられます。ひとつは売上増に即効性のあるもの、もうひとつは後からじわじわと効いてくる遅効性のものです。
パッケージデザインや店頭POPなどは、お客さんに「美味しそう!」だと思ってもらうための役割を果たすものです。購買動機を訴求することに直接関わっているため、前者の即効性があるものですが、一方で、企業のイメージアップにつながるCSR活動は、時間をかけて効果が出てくる後者にあたります。
CSRを日本語に訳すと「企業の社会的責任(=Corporate Social Responsibility)」という意味になり、一般的には収益性を求めるだけなく、環境活動やボランティア、寄付活動など、企業が果たす社会貢献の活動をいいます。
ご相談者さまが行っている農福連携は、このCSR活動の範疇になります。
さて本題です。「農福連携をアピールしたら逆効果だった」ということですが、これは農福連携という行動が野菜の美味しさのイメージとリンクしなかったことに原因があるように感じます。
志ある行いを語るがゆえにお客さんが野菜に求める「価値=新鮮・美味」の訴求がおろそかになっていたのかもしれません。
農福連携をアピールするのであれば、商品そのものに絡ませるのではなく、農園という組織内での取り組み(社会貢献)として、リーフレットやWEBサイト内でアピールした方が良いと思います。
農福連携は商売のアイテムとしてはすぐに売上につながらない、野菜でいえば元肥のようなものです。
社会貢献と割り切り、日々の売り上げからは少し距離を置いて捉えてみてください。「継続はチカラなり」です。
続けていれば、御社の取り組みが地元メディアに取り上げられる日が来るでしょう。知名度が上がって売り上げアップにつながるその日が来るまで、粛々と続けてみてください。