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農福連携のための法人を立ち上げる方法を教えて

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農福連携のための法人を立ち上げる方法を教えて

独立して就農した3年目の農家です。1反ほどの農地で露地栽培の野菜を育てています。

いまは農地の規模も小さいですし、仕事を覚えるのに必死です。しかし、軌道に乗ってきたら農業ビジネスを展開していきたいと考えています。

ビジネスといっても、私の場合は社会貢献をメインに考えています。

弟が軽度の知的障がい者なので、障がい者施設と協働するか、自分で「就労継続支援A型」の認可をもらって農業ビジネスと福祉を連携させることを考えています。

農業を軸にして障がい者雇用の機会を広げ、作業の分業化を実践し、農業と福祉の連携ができることを考えているとワクワクしてきます。

とはいえ、思い描いているような農福の法人の立ち上げは簡単に実現できることではありません。

かなり長期の計画になると思いますが、まず農業ビジネスをメインにした会社法人を設立し、軌道に乗ってきたら他施設との協働を行い、そこから福祉の非営利法人(一般社団法人かNPO)を作って、そこに仕事を発注するような流れを考えていいます。

こういった法人を設立する場合の具体的な手順を教えてください。
(東京都・渡辺さん/仮名・20代)

伊藤文弥

NPO法人つくばアグリチャレンジ代表理事

「部屋、スタッフ、運転資金」3つを確保することが重要です

弟さんの障がいの程度など、不明な部分もありますが、就労継続支援A型認可を受けるための手順についてお話ししていきましょう。

相談者さんは「非営利法人」を想定していらっしゃいますが、「株式会社」でも就労支援はできますし、それぞれメリットもあるので、「非営利」にこだわる意味はあまりないと思います。とはいえ、ここでは法人を立ち上げたのち、就労継続支援A型の認可を受ける手順を中心にお話ししていきますね。

まず、NPO法人の立ち上げについては、お住まいの都道府県の担当者に質問するのが良いと思います。僕はつくば市で就労継続支援B型の農場を運営しているのですが、茨城県の担当者に教えてもらっています。

就労継続支援A型施設を始めるにあたって、必要な3つのポイントをお話しします。
Ⅰ:施設〜どんな施設で許可を取るか
II:人員〜その施設で許可を取るための人員を確保しておくこと、
Ⅲ:お金〜十分な運転資金の確保についてです。

Ⅰの施設に関してですが、都道府県によって許可が下りる基準にバラツキがあるので、まずはその点を確認しておきましょう。

就労継続支援の施設には、最低でも3つの部屋が必要です。

1つは、相談できる部屋があるか?
2つめは多目的に使える部屋があるか?
3つめは訓練指導に使える部屋があるかどうかですが、加えて、トイレや手洗い場が必要条件になります。

それ以外にも、事務員が仕事する部屋や、給食を作る部屋などが必要になります。

2と3の多目的室と訓練指導室は、場合によっては兼ねることができます。外で農作業をする仕事については、「2つの部屋を兼ねても支障がない」と判断される場合もあるので、まずは自治体の担当者に確認してください。

次に、IIの人員の基準ですが、「サービス管理責任者」と言って、福祉事業経験者を配置する必要があります。この責任者以外には、少なくとも2〜3人の職員を採用します。

福祉事業所の運営には、障がい者の定員に対して、職員を何人配置するか、さまざまなパターンがありますから、一概に2人なのか3人なのかは決められません。多めに職員を配置する場合もあれば、その反対もあるからです。

ただ人員配置は認可を受けるための重要なポイントになりますから、配置基準をしっかり理解すること。最低でも、サービス管理責任者と、あと2人は採用できると良いでしょう。

最後にⅢのお金の問題です。福祉事業所は、障がいがある人たちに就労訓練の機会を提供して、国からお金をもらう制度です。4月に職業訓練を提供した場合、入金されるのは2カ月後の6月15日です。

福祉事業所を始めるスタート時点でいろいろな職員を採用したり、事務所を契約しなければならないので、入ってくるより出ていくお金が多いです。入金が遅れる場合も踏まえて、事前に運転するための現金を用意しておくことが必要です。

特に就労継続支援A型の場合、事務職員がカギを握ります。A型もB型もお金の請求先は、国民健康保険団体連合会と同じなのですが、A型だけ使える国の補助金があるので、補助金を獲得するための申請など、事務能力が求められます。その部分を勉強してA型施設としてスタートされるのが良いと思います。

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鈴木厚志

京丸園株式会社 代表取締役

法人化を急がず、自分に合った農福連携の姿を見極めることが大切です

農福連携が全国に広がっています。いろいろな連携の仕方があるので、まずは全国の事例を調べ、どの連携が一番自分に合っているかを選定するところから始めてみてはいかがでしょう。

全国事例を見てみるとA型だからうまくいくとも限らないことが多々あります。私の知り合いは、残念ながら5年くらいで解散してしまいました。できるだけ実際に運営されている方々に直接意見を伺うことをおすすめします。

農福連携で大切なことは、本業の農業経営をしっかりさせることです。

農業経営が不安定であるところに不安定な障がい者(福祉)を連携させると、お互いが苦しい思いをすることになりかねません。

とくに福祉のリスクは大きく、目まぐるしく変化する福祉制度(法律等)の対応が大変です。自分の思い描いているものと違うものになる可能性もあります。近隣の福祉施設の状況により障がい者の確保が難しくなるケースもあります。

だからこそ基本となる農業経営を安定させ、農福連携の目的をしっかり立ててください。

法人設立のタイミングは慌てなくていいでしょう。法人設立を急ぐよりもどのような農福連携の姿が自分に合っているかを見極めることが重要です。

ちなみに私の農園は福祉事業を行っていませんので、福祉的な制限は一切なく自分の夢に向かって自由に農園経営が行えます。あくまでも農業経営を主体にして福祉を盛り込む農福連携もあるわけです。

また、農業経営+企業(特例子会社)との連携モデルも考えられます。現在、浜松市では「ユニバーサル農業」としてこのモデルを推進しています。

まだまだいろいろな仕組みがありますので今のうちに自分に合ったものを見つけ出してください。

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