埼玉県で都市近郊農業を営み、旬の野菜を育てております。
こちらでもイノシシやアライグマ、ハクビシンなどの被害が増えてきました。
栗や里芋、とうもろこしや果樹の被害が目立ち、家屋に浸入することもあります。
自治体や組合の主導で防護柵の設置などがすすめられてきましたが、維持管理や理解が進みません。
特に、小規模農家は手間や時間がかかると、設置に消極的のようです。
神奈川県などでは「シカが好まない」などの不嗜好性の植物を植えて、シカの食害対策をしているそうです。
そこで、有害鳥獣に強い農産物というのはどんなものがあるか知りたくなりました。
もし、市場価値がありそうなら、栽培に挑戦してもいいかなと考えています。
採算ベースに乗らなくても「この農家は新たな取り組みをしている」と、アピールできますよね。
有害鳥獣に強い、動物たちが近寄りたがらない作物の品種や、こうした取り組みの例があれば教えてください。
(埼玉県・小西さん/仮名・50代)
吉備国際大学 農学部・獣害防除研究チーム
吉備国際大学 農学部 地域創成農学科・醸造学科
イノシシ対策の作物として「エゴマ」と「ヒカマ」が期待できます
私どもが取り組んだ研究事業からお伝えします。イノシシの忌避効果について、「エゴマ」および「ヒカマ」を検討しました。
ヒカマはメキシコ原産のマメ科植物です。エゴマについては葉の香り成分であるペリラケトンやエゴマケトン、ヒカマについては葉やつる、種子の有毒成分であるロテノンの忌避効果を期待したものです。
試験では、畑の周縁部に植え、イノシシの侵入頻度や、エゴマとヒカマの食害の有無を調べました。
その結果、イノシシの畑内への侵入を防ぐ忌避効果は確認できませんでした。ただし、エゴマとヒカマ自体には食害がみられなかったため、忌避作物というより、獣害が深刻な畑ではイノシシなどに狙われにくい代替作物となる可能性があるかもしれません。
対象作物の市場価値についての調査はできていませんが、エゴマについてはエゴマ油が健康食品として認知されており、ある程度の期待が見込めるのではないでしょうか。
ヒカマについては、毒のない塊茎部、つまり膨らんだ根の部分が食用となります。ヒカマ塊茎には水溶性食物繊維の一種であるイヌリンが豊富に含まれ、血糖値の適正化や腸内細菌の改善などに効果があることが報告されています。
また、国内ではほとんど栽培されておらず、健康効果が期待できる新しい機能性作物として売り出せば、商業的な価値があるのではないかとも考えています。