茨城県のサツマイモ農家です。イノシシの被害に悩まされています。
一夜にして食べ尽くされてしまうので、収穫直前に被害に遭った年は離農すら考えました。
ありあまる被害に、遂に狩猟免許を取得して箱罠を購入しましたが(市からの補助金を利用)、今度はなかなか箱に入ってくれません。罠の手前にある米ぬかを食べるのみです。
そこで、イノシシを仕留めるのに効果的な餌や、餌のやり方があったら教えてほしいです。
捕獲できたら報償金ももらえるので、せめて箱罠にかかった費用を取り戻すのが当面の目標です…。
(茨城県・三島さん/仮名・50代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
時と場合によって餌を使い分けるのがポイント
箱罠(はこわな)は、イノシシなどの野生動物を鉄製の箱の中に餌でおびきよせて捕獲する罠であり、安全性があり、野生動物の捕獲にも有効な手段として普及しています。
しかし、相談者さんのように箱罠にイノシシが入らない、という悩みを持つ方は尽きません。
イノシシが箱罠に入らない理由は大きく3つあります。
ひとつめは箱罠の外の撒き餌の量と与える方法です。相談者さんは撒き餌を多く与え過ぎていませんか?
イノシシはその大きさからたくさん食べるように見えますが、胃は小さく、成獣でも600cc(500ccのペットボトルより少し大きい)程度です。撒き餌の量が多すぎるとそれだけで満足し、空腹でも警戒する箱罠の中へ入る訳がありません。
また、撒き餌を与える方法ですが、箱罠外の撒き餌を同じ場所に撒き続けていませんか?撒き餌は食べたらそこには撒きません。
最初に獣道にひとにぎり置き、食べたら少しづつ箱罠に近づけるように置きます。そして最終的には箱罠の中だけに置き、イノシシを誘引します。
ふたつめは、周辺に餌が豊富にありませんか?相談者さんの畑以外にも周辺にサツマイモ畑があって食べ放題であったら箱罠には入りません。
収穫まで期間があるならば、みなさんにも協力してもらい、すべての畑を金属性の侵入防止柵で囲いイノシシがサツマイモを食べられない環境をつくります。
それからサツマイモを餌にすると、それまでサツマイモ畑に依存していた個体を捕獲することができます。
もしくは、収穫できるならすべての畑で収穫してしまえば、食べるものがなくなるので同じようにサツマイモを餌に捕獲できます。
最後に、イノシシは農地周辺に来ると餌など多くの誘惑がありますが、冬季の作物がない時期は誘惑がないので農地に来ません。
つまり、誘惑がない冬季は、農地に設置した箱縄の餌につられてイノシシを招き寄せることができますが、それ以外の季節は農地周辺に置いても箱罠は機能しません。
そのため箱罠はイノシシが農地へ出るために頻繁に使っている林縁部の獣道(けもの道)を突き止め、その周辺に置くのが効率よく捕獲するコツです。この時、餌は圧ぺんトウモロコシ(フレーク状の乾燥とうもろこし)を使用します。
イノシシ捕獲でよく使われる米ぬかは湿度や雨などで腐敗しやすいので人間が頻繁に餌を交換しなくてはなりません。
イノシシは非常に警戒心が強いので、箱罠への人間の頻繁な接近は捕獲に対してはマイナスです。その点、圧ぺんとうもろこしは粒状で粗いので腐敗しづらいため餌交換の頻度を少なくできます。
このほかにも小さな要因はありますが、まずは上記の方法で改善を試みてはいかがでしょうか。