群馬県北部の山間で、枝豆を中心に、なすやトマト、かぼちゃなどを露地栽培しています。
最近、近くにある数年前まで果樹園だった土地が、耕作放棄地になってしまいました。
すると、シカやイノシシといった野生動物たちが頻繁に姿を見せるようになりました。
どうも、手入れされていない果樹と背の高い草だらけになったのをいいことに、そこをエサ場にしているようなのです。
ここを拠点として人間と野生動物の距離が縮まってしまい、近い将来、私たちの畑にも農作物の被害が起こるのは目に見えています…。
しかし勝手に耕作放棄地に侵入することも、野生動物を捕獲することも違法ですよね。
こういった場合の獣害対策はどうしたらいいのでしょうか。
(群馬県・鈴木さん/仮名・50代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
獣害対策よりも耕作放棄地の解消が先決です。農業委員会に相談してみては?
相談者さんは対症療法的(症状を和らげるため)に野生動物を駆除したいと考えているようですが、この場合は根治治療として耕作放棄地問題へ対応するのが先決のように思います。
農地間のトラブルは「民民」の問題ですので、行政(農政)は介入できないのが原則となります。
ただし、各市町村には農地事務を執行する行政委員会である農業委員会があります。
2015(平成27)年に「農業委員会法」が改正されて、農業委員会の業務の重点は「農地利用の最適化の推進」であることが明文化されました。
そのなかには、遊休農地の所有者に対する改善勧告や罰則規定も設けられています。
そのため現在、農業委員会は遊休農地の解消に対して積極的な取り組みを行っているはずですので、農業委員会に相談されてみてはいかがでしょうか。
なお一部ですが、改善勧告された後にいったん原状回復をして数本の果樹苗を植え「耕作をしている農地である」と主張して罰則規定を逃れようとするケースが見受けられます。
しかしこうした人たちはもともと耕作する気はありませんから、回復した農地もまたすぐに荒れ地になってしまいます。
隣が耕作放棄地であっても、正しい対策をすれば作物は守れます。最終的には「自分の田畑は自分で守る」に尽きますので、相談者さんのケースでは何が最適なのかを諦めずに模索していただきたいと思います。