つい先日、隣の畑で太陽光パネルの工事が行われていました。
農業をしながら太陽光発電ができるような形状になっていて、かなり高さがあるものでした。
畑の所有者は、私の家から少し離れた所に住んでいる人です。
こちらには、太陽光パネルを設置するという話は一言もなかったので、正直「断りもなく」と思っています。
さらに、最近は豪雨や台風による大きな水害が発生しているので、台風でパネルが飛ぶ可能性や、こちらの畑にパネルの照り返しが来て、農作業に支障がでるかもと心配しています。
今からでもパネル設置を止めさせたり、解決する方法はあるでしょうか?
(宮崎県・久木田さん/仮名・50代)
生津賢也
一般社団法人ソーラーシェアリング協会
住民説明会で強度設計書を見せてもらい「この通りに施工するんですね」と証拠をとりましょう
災害時にパネルが損傷したり飛ばされたり、また架台が倒れたりすることは可能性としてはあり得ます。
ただ、それは施工業者が「きちんとした工事」をしていれば、かつ想定外と言われるくらい大きな災害でない限りは安心です。
では、「きちんとした工事」とは何かというと、具体的には「JIS2017」に適合しているかどうかです。
専門的な話になりますが、2018年10月に経済産業省のWebサイトで「電気設備の技術基準の解釈」の一部改正が告知され、太陽電池発電設備の支持物、つまり架台について求められる内容が変わりました。
この改正により改訂された日本工業規格 JIS C 8955、つまりJIS2017年度版(通称JIS2017)への適応が義務化されることで、JIS規格を満たしていれば、例えば風速40mまでは耐えうる強度であるといった強度設計がなされていることになります。
例えば弊社では、きちんと規格にのっとった強度設計をしているので、2019年に大きな台風が通過したときでもひとつもパネルは飛びませんでしたが、全国では飛んだ例も多数ありました。
指示通りに施工をしていない業者で手抜き工事だと、パネルが飛んだり架台が倒れたりといったいうケースは起こりえます。
工事内容を確認する手段としては、施工主と施工業者が開く住民説明会でどんな内容で施工するのかを質問することが妥当でしょう。
強度設計書等を見せてもらい、「このとおりに施工するんですね」と言質を取っておく(記録・録音しておく)のが望ましいです。
質問者の場合は説明がなかったということですが、地域ごとに説明会を開く、開かないの決まりが異なります。
例えば、ある地域では施工前にきちんと住民説明会を開かなければいけないが、なかにはルールがない地域もあり、その場合は説明会がないこともあります。
この規則は地域の農業委員会が決めています。ご質問者の地域がどうかは農業委員会に聞いてみてください。
ちなみに、設置されたあと、畑にパネルの照り返しがあるかということについてですが、実はこの「パネルの照り返し」については、太陽光パネルの施工におけるクレームの3大要因のひとつです。
ですが、現在パネルメーカーが出しているものはすべて3層構造で、セル、ガラス、反射防止膜になっていて、直接の反射は0.6%と、照り返しでまぶしいということはまずないと言えます。
一方で、架台が地上3mくらいのものでパネル自体の影がかかってしまうのではないかという心配する方が多いですが、それこそまさに作物の生育にも関わるので、施工者・地権者が地域住民と事前にしっかりと説明するべきポイントです。
そして、お気持ちはわかりますが、施工を止めたいというのは当事者同士で話し合うしかないのが現状です。
農業委員会が説明会を開くように決めていたとして、もし開いていなかったとしても、地域住民との間で、後々、軋轢が生じることはあるかもしれませんが、違法なわけではないという現状はあります。
いずれにしても、ソーラーシェアリングをする場合は農業委員会がルールを決めています。まずは質問者の畑のある地域の農業委員会に問い合わせ、どんなルールになっているか聞いてみてはいかがでしょうか。