私たちの集落は中山間地域にあります。
これまでもイノシシやシカ、ハクビシンの被害に悩まされてきたのですが、近年近くの集落までニホンザルの群れが姿を見せるようになってきました。
自分たちの集落に姿を見せるのも時間の問題かと思います。
ウチの集落では、他の集落に先駆けて国の鳥獣被害対策の補助金や県の里山整備の予算なども活用して、電気柵の設置や山林の裾部分の刈り払いなども行ってきました。
また、早くから電気柵の導入もすすめ、現在はワイヤーメッシュ柵の上に、3段の電線を張る複合柵を導入して効果を上げています。
以前は電気柵のみの設置だったので、雑草などによる漏電も多かったのですが、複合柵だとその心配もありません。
ただし、ニホンザルはのぼる能力が高いので、こうした従来の複合柵で大丈夫なのかどうか、不安があります。
現在の複合柵をサルにも効果がある形に改良するとしたら、どうしたらよいでしょうか。
(栃木県・須藤和毅さん/仮名・60代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
猿の対策には、電線の間隔が重要で、高さ1m50cmは必要です
サルの侵入防止柵は、複合柵であっても、高さ1m50cmは必要です。
ご相談のワイヤーメッシュは、横にして使用していると思われるので、高さは1mですね。
そこに3段の電気柵を張っているとなると、20cm間隔なら全体の高さが1m60cmか、10cm間隔の場合は1m30cmのいずれかだと思われますが、どちらしてもサルに対しては不十分だと思われます。
電線の間隔が20cmだとすると、子ザルや若いサルは簡単に侵入できます。
一方、電線の間隔が10cmの場合は、全体の高さが足りないので、ダイレクトに飛び込まれます。
複合柵は物理的な資材によって侵入行動の動きを止め、電気柵によって心理的なダメージを与えるものです。
したがって通電線に触れさせなければなりません。
そのために必要な高さが1m50cmなのです。
ワイヤーメッシュ柵に手を加えてサル用にするには、横につないだワイヤーメッシュの合わせ目(2m間隔)に、長さ1m50cmの直管パイプ(直径φ19mmのパイプハウス用資材)を取り付けます。
これが立て支柱になります。
この支柱の上部に、支柱を十字に固定するためのクロスバンド(=フックバンド)を使って、横支柱と通電線を設置するための農業用支柱「ダンポール」を取り付けます。
これらの支柱はすべて金属なのでアース(接地)になります。
この支柱に防風ネットを取り付けます。
この時、重要なのがワイヤ―メッシュの網目のサイズ(目合い)です。
目合いが10cm以上であれば防風ネットは裾まで覆う高さが必要になります。
網目が5cmであれば1mで良いでしょう。最後に「ダンポール」に通電線を設置して完成です。
最後に設置後の注意点です。
最も重要なのが、支柱を使う作物は柵から離して作付けすることです。
サルの場合、柵の外側に木や屋根、電柱などがあるとそこから飛び込む場合があります。
入ってしまったサルは、中の支柱を使って簡単に出ることができると理解すると、その後も続けて入るようになります。
簡単に出られなければ2度と入りません。