農業とほかの仕事を組み合わせて就農する「半農半Xで」京都府に移住した者です。
米を10アール、野菜を10アールずつ作付けし、ほとんど自給自足で賄っています。
しかしここ最近、集落のあちこちで猿の被害が深刻化しており、わたしも育てていたミニトマトをほとんど食べられてしまいました。
役所や専門家に相談しても、地道に猿を追い出すしかないという回答しかもらえず、来年以降の作付が不安です。
動物保護の観点から、駆除もハードルが高く、猟友会が撃ちたがらないという心情的な問題もあります。
インターネットで調べてみると、猿被害を減らすことのできる複合柵というものを見つけましたが、メートルあたり1,500円ほどもかかってしまうので、悩んでいます。
なるべく安く、かつ確実に猿の被害を防ぐ方法はないでしょうか。
(京都府・笹本さん/仮名・30代)
山本麻希
株式会社うぃるこ/長岡技術科学大学准教授
猿対策は、補助金を行政に申請し、8段の電気柵を張り巡らせましょう
ニホンザルは非常に賢いので、野生動物のなかでも被害対策が難しい動物です。
その分、国や地方自治体からの補助金もありますので、電気柵の設置の際には、自治体に相談してみてください。
ニホンザルにおすすめの電気柵は、地上から15cmきざみで4段、それから20cmきざみで3段、最上部まで25cmの計8段の電気柵がおすすめです。
8段のうち、5段目と7段目はマイナス、そのほかはプラスの電流が流れていて、サルがジャンプして柵に触っても電気が流れるようにする必要があります。
ほかにもワイヤーメッシュ柵の上に電気柵を併用して設置するタイプもあります。8段柵は構造も複雑で、設置が比較的難しいので、必ず設置前に電気柵に詳しい人に設置方法について教えていただいた方がいいでしょう。
サルはジャンプ力もあるし、近くに木や電信柱、建物などがあれば、そこから柵の中に飛び移ることもできますから、事前に注意が必要です。
農地のそばに登れるものがある場合は、トゲトゲがある有刺鉄板などを、木や支柱に巻き付けて針金で固定して、サルが登れないような工夫をする必要があります。
匂いとか、威嚇音を出す装置などは一時的に効果はありますが、じきに慣れてしまうので、長期的に被害を防ぐには電気柵の設置をお勧めします。
吉田洋
合同会社獣害対策研究所/徳島県那賀町地域おこし協力隊
複合柵はおすすめですが、犬を使った柵で対処する方法もあります
ご質問にありますとおり、「金属メッシュと上部に電気柵を組み合わせた複合柵」はとても有効で、設置することをおすすめいたします。
気にされている費用については、国の交付金(鳥獣被害防止総合対策交付金)を活用しますと、設置コストが安くなります。
京都府の場合ですと、平成27年度までに総延長171kmの防護柵がこの制度を使って設置されています。
この制度は、ご自身で防護柵を設置する場合、資材費が全額補助され、業者などに設置を依頼した場合は、資材費の半額が補助されます。
質問者さんは圃場が比較的小規模なので、ご自身で設置した方が、設置後の柵のメンテナンスも容易ですし、コロナ禍の影響で防護柵の資材費が高騰していることから、全額補助してもらい、ご自身で設置することをおすすめいたします。
さらに、これとは別に市町村が独自の補助制度を整備していることがあります。どちらにせよ、すぐに市町村の担当部署に直接相談することを、強くおすすめいたします。
また、電気複合柵とは別に「犬を使った柵」もあります。
これは圃場の周りをリードで囲い、犬が圃場の周りをまわれるようにしたものです。
もし、動物を追いかける性格の中・大型犬を飼っているようでしたら、この方法もおすすめです。
犬の能力次第ではありますが、ノウサギのような中型動物や、カラスのような鳥類にも効果を発揮することがあります。