群馬県の自然豊かな山間部で梅を中心に育て、ナスやネギなどの野菜も手掛けています。
近隣では以前からクマの目撃情報が多く、登山やキャンプ、渓流釣りなどで遭遇して負傷するという人身被害も年に数件発生しています。
これまで、あまり神経質にはなっていなかったのですが、テレビで最近の相次ぐクマ被害を見ていると心配になってきます。
とくに、うちの家族は気になっているようです。
冬場は落ち葉や米ヌカ、生ゴミを使った堆肥づくりをしているのですが、クマは発酵臭を好むともいわれているので、腹をすかせたクマを呼び寄せてしまうのではないかと家族が心配しています。
しかし、堆肥づくりを簡単にやめるわけにもいきません。
実際に、堆肥づくりの臭いはクマを呼び寄せてしまう可能性があるのでしょうか?
(群馬県・金井さん/仮名・60代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
クマの本当の狙いは農作物や果物、蜂箱なので、不要な作物はなくしましょう
ツキノワグマは嗅覚が優れた動物です。
視覚よりも嗅覚で行動するため、発酵臭などの強い臭いに誘引されるのは事実です。
堆肥もそうですが、稲のホールクロップサイレージ(WCS)も発酵のため、そこに乳酸菌を添加すると誘因物となってしまいます。
しかし、誘引されても好んで食べるか?…といったら、どうもそうではないようです。
堆肥は誘因物ではあるけれど、ツキノワグマをそこに定着させるだけの魅力があるかどうかは疑問が残ります。
堆肥だけなら頻繁に出没を繰り返すことは無いと思います。
問題は堆肥がツキノワグマを人里に誘引してしまうことにあります。
人里にはツキノワグマの好む食べ物がたくさん存在します。
畑の農作物や柿、栗、蜂箱などです。これらは誘因物でもあり定着物でもあります。
このなかで特に問題となるのが柿と栗です。これらはツキノワグマを完全に地域に定着させるものです。
地域に定着させてしまうと、行動エリアになってしまうため、頻繁に出没するようになり、人々の生活にも影響が出てしまいます。
堆肥は確かに誘因物ではあるけれど、定着させるものにはなりえません。
ツキノワグマ対策は定着させないことです。つまり定着させる原因となる作物をなくすことです。
農作物は侵入防止柵で対応し、不要な柿、栗は枝の伐採を優先して行うようにします。
堆肥周辺の農地はしっかりとした対策をして、近くの柿、栗、養蜂用の蜂箱は伐採や撤去を心がけてください。