ブリなど養殖魚の餌代が高騰している。昆虫をエサにできると聞いたのですが本当ですか？

YUIME Japan編集部 / 2021.11.10

餌、仕掛け

#ブリ #養殖 #鹿児島県 #流行

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ブリの養殖を行なっていますが、魚粉などのエサ代が上がっていて経営を圧迫しています。

近年、代替品として昆虫をエサに使う研究がされているという話を聞くのですが、価格面や栄養、機能性などの点で実用化の目途はどうでしょうか?

どんな昆虫を使うのかにもよりますが、たとえばコオロギのような昆虫であれば、イメージもいいので差別化にもなると思うのですが…。
（鹿児島県・長元芳樹さん/仮名・50代）

長崎一生

さかなの会代表

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実用化段階に入った昆虫飼料ですが、まだまだ未知数の部分も多いです

最新研究の分野は各社の機密情報になっている部分もあり、あまり踏み込んだ内容に言及することはできません。一般的なプロセスを提示するまでとなってしまいますが、ご勘弁ください。

まず、実用化という点でいうと、昆虫飼料はすでに販売されているものもあるので、その段階に至っているといえます。

たとえば、イエバエを原料とした養殖飼料など、インターネットで調べると出てくると思いますので、検索してみてください。

価格面では、まだ出始めたばかりですので、コストダウンしていくのはこれからという段階だと思います。

こうした昆虫飼料の研究や普及がどのくらいのスピードで今後すすんでいくのか、また実際に将来継続的に使われるものになっていくのかはまったくの未知数です。

栄養や機能面についてもさまざまな研究結果が報告されていますが、昨今は昆虫ブームということもあり、ポジティブなニュースが目に入りやすい分野であるといえます。

ただ、実際のところはどうかというと、研究結果について見えていない部分もあることでしょう。また、飼料を使う状況や魚種によっても導入成果は異なってくるため、結局は個別具体的に試してみないと何ともいえないところです。

もし昆虫飼料の導入を検討されるのであれば、ご自身にとって必要だと思う昆虫飼料の情報を収集すること。

また、手に入る昆虫飼料を実際に取り寄せて、その効果のほどを試してみる。さらには、その試験データを分析するといった一連の手順が不可欠です。

もし、ご自身にとって必要な情報収集の方法がわからなければ、まずは地域の水産試験場や関係のある研究機関に相談してみてください。

また、昆虫飼料を実際に取り寄せて、ご自身で効果のほどを試してみたり、その試験データを分析するのが難しければ、こちらも同様に試験場や研究機関に相談してみたりしてはいかがでしょうか。

まずはともあれ、ご自身の状況に合ったやり方で情報収集から動いてみることが大事かと思います。

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井戸篤史

愛媛大学客員准教授/弁理士

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生産コストは課題ですが、栄養や機能面では魚種によりさまざまな効果が期待できます

昆虫を魚粉に替わる動物性タンパク質として利用する取り組みは世界中で進められていますが、昆虫の生産コストが最大の課題です。

海外では大規模な昆虫生産プラントが稼働していますが、現時点の販売価格は、魚粉の2～3倍以上であり、飼料中の魚粉を単純に置き換えるだけで、飼料コストを抑えることは、残念ながらできません。

栄養面では、魚種による違いと、昆虫種による違いが顕著に現れます。

甲殻類を好むマダイや、淡水期に昆虫を食べているサケ、マスでは、昆虫により魚粉以上の成果が出ることがあります。

ブリのような魚食性の強い魚では、一般的に昆虫は魚粉に劣ります。しかし、まだ研究途上で詳しくご紹介することはできませんが、愛媛大学が研究を進める中で、昆虫によっては、魚粉と同等以上の成長を示すものがあることも分かってきました。

そして、機能性については、もともと魚粉の「代替タンパク質（Alternative protein）」として注目されてきた昆虫ですが、現在では、魚粉等の既存の飼料原料には無い、新しい価値を見出そうとする「Beyond the protein（タンパク質を越える）」というコンセプトの下、昆虫の機能性に関する研究が進められています。

愛媛大学で開発された、カイコのサナギ由来の多糖類を有効成分とする機能性サプリメント「シルクロース®」は、養殖魚のストレス低減から、耐病性の向上、水温変動への耐性、身質の改善等、さまざまな効果がブリやマダイ等の養殖魚で確認されています。

「シルクロース®」は、飼料の低魚粉化による障害を抑える目的でも使用されており、代替タンパクではないものの、その機能によって飼料コストを抑えることができるかもしれません。