東北で、マグロ漁を個人で行っています。最近、マグロの餌であるイカの減少のためか、マグロの不漁が深刻です。
ほかの漁港でも、土佐ではカツオ、駿河湾ではシラスが不漁で問題になっていて、どこも似たような状況のようです。
最近テレビや新聞で、「SDGs(持続可能な開発目標。海の豊さを守るという目標もある)」という言葉を見聞きしますが、我々漁師が直面している不漁の問題にも通じるものがあるのではないかと思っていました。
そんな時、漁協の職員と話していると、水産物にもSDGsに関連した「MSC認証」という制度ができたと知りました。
日用品などで目にするエコマークやリサイクルマークのようなもののようです。ですが、いまいちよく分かりません。MSC認証の概要と取得方法を教えてください。
(青森県・興村さん/仮名・65歳)
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
持続可能な漁業のために、厳格な規定で獲られた水産物だと評価するための認証です
水産資源管理の問題が、世界的に注目を集めています。その流れで「SDGs」が世界的な風潮となり、SDGsのテーマである「持続可能性」は漁業においても重要です。
身近なところでは、小売業界でもイオンやコストコなどの大手から、環境に配慮した農畜水産物を優先的に取り扱う動きを進めています。
「MSC(Marine Stewardship Council)」は、海洋管理協議会のことです。MSCの厳格な規格で獲られた水産物に与えられるのが「MSC認証」になります。持続可能な漁業により魚を獲りすぎず生息域を保護することが、漁業者の生活を安定させることになるのです。
MSC認証は、MSC漁業認証規格に基づき、独立した機関が審査します。このように、独立した審査機関を間に入れる第三者認証は、国際認証としては常識となっています。
審査は、「資源の持続可能性」「漁業が生態系に与える影響」「漁業の管理システム」の3つの原則に基づいて行われます。取得方法については、まず、MSC認証の審査を受ける必要があります。審査自体は独立した第三者審査機関が行いますが、MSCによるサポートがあります。ご興味があるようでしたら、ぜひ問い合わせてみてください。
山内愛子
水産政策審議会資源管理分科会特別委員
大きく2つの認証から成り立ち、持続可能性や流通の過程を管理しています
海のエコラベル「MSC認証」は、大きく2つの認証から成り立っています。ひとつは漁業の持続可能性を審査するための「漁業認証」で、もうひとつは漁場から製造、加工、販売にいたる流通のすべての過程を管理する「CoC認証」というものです。
この2つの認証があることで、認証された製品と認証されてない製品が分けられるようトレーサビリティ(その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのかが追跡可能になること)を担保することができます。
漁業の持続可能性を審査する基準は、環境に与える影響の危険度を幅広く確認できるように、漁獲の対象となる資源(魚)はもとより、混獲(漁獲対象ではない生物が対象としている魚に混ざって捕獲されること)される生物、海洋生態系への影響、海底環境への損害などが科学的に審査されます。
さらに、実施されている管理体制の実効性についても客観的な指標が設けられており、それに基づいて審査されます。
このように、MSC認証の審査項目はとても多く、また「エビデンス」といわれる証拠書類を揃えなくてはいけないことから、本審査を受ける前に予備審査を受けることで、不足部分や、改善が必要なポイントを理解することが推奨されています。
実際の審査は、MSC事務所や環境団体ではなく、国際的に認定された認証機関と呼ばれる第三者が行います。日本では量販店や外食産業などでMSC認証をもった水産物を取り扱うことが増えているので、取り組んでみるのもいいと思います。