私は新潟県の佐渡島で養殖業をしています。
テレビなどのメディアでもたびたび話題になりますが、海洋ゴミに頭を悩ませています。
先日も船のプロペラにビニール袋が巻き付いて、船外機のエンジンが停止するというトラブルに見舞われました。
漂流しているゴミのなかには、海外から流れてきたゴミも多く見られますが、国内から流出しているゴミも驚くほどたくさんあります。
日本は諸外国と比べて街がきれいで、比較的モラルが高いとされてきましたが、多くの海洋ゴミを見ていると、日本人のモラル低下を危惧します。
残念なことに、漁師のなかにもタバコの吸い殻や空き缶を平気で海に捨てている人がいます。
海洋ゴミによる生態系への影響を考えると、自分たちの首を自分たちで絞めていると思わないのかと、憤りを感じます。
このような海洋ゴミ問題をリアルに感じるなかで、水質資源を守るために私たち漁師に何かできることはありますか。
また、多くの人に海洋汚染についてもっと知ってほしいと思っているのですが、どんな啓蒙活動ができるのかアドバイスがほしいです。
(新潟県佐渡市・久米太一郎さん/仮名・33歳)
麓 貴光
株式会社水土舎 代表取締役
国の補助制度を活用し、市町村、自治会、地域住民と連携して活動しよう
海洋ごみの問題は、近年世界的にも注目されています。この問題に対し、近年さまざまな国の機関がそれぞれ対策を行っている状況です。
日本においても直接的な対策として、環境省、農林水産省、国土交通省(閉鎖性水域のみ)、水産庁、海上保安庁がそれぞれ行っています。
また、関連の取り組みとして、経産省ではごみの排出や流出抑制、気象庁では監視モニタリングなども行われている状況です。
ここでは、環境省と水産庁が行っている取り組みや事業などについて、これから行いたい活動に繋げられる情報を提供できればと思います。
環境省では「プラスチックを含む海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)対策」としてさまざまな取り組みを行っており、その情報は環境省のWebサイトに掲載されています。
中には「海洋ごみ教材」として、小中学生や高校生用の教材も掲載されているため、普及啓発活動を行う上で活用できるのではないでしょうか。
また、ごみの回収や処分についても地方自治体と協力して取り組みを行えます。
環境省の海洋ごみ対策の取り組みは、各地方自治体が対策の計画を立て、その費用として、一定割合の補助を国から受ける仕組みとなっています。そのため、まずは各自治体へ相談する必要があると思います。
水産庁では、「水産多面的機能発揮対策事業」というものがあり、その対策の中に「海洋汚染等の原因となる漂流、漂着物、堆積物処理」という活動があります。
こちらは漁業者などが行う清掃活動やそれに伴い生じる処分費用などが補助として受けられるものです。
また「多面的機能の理解・増進を図る取組」として、環境教育や啓発活動を行う場合の費用を補助として受けられるものもあります。
対象となる活動やそれに対する補助額や割合、計上できる費用など細かな規定はありますが、想定される取り組みに適した事業かと思います。
実際にお悩みを抱えているご本人が何か行いたいと考えているのであれば、水産庁の事業は十分活用できるものだと思います。もちろん、組合や市町村が費用を負担できる場合は問題ないですが、なかなか難しいのではないでしょうか。
こういった国が行っている支援事業や公益的な活動については、お住いの市町村や県に問い合わせることが第一歩かと思います。
また、支援事業については、直接関係省庁に問い合わせても問題ないと思います。
最後になりますが、こういった取り組みを行う場合、漁業者のみではなく、自治会や地域住民、行政機関や研究機関などとも連携を行うことをおすすめします。
多様な連携はなかなか難しいことではありますが、そうすることによって、活動の幅が広がり、地域住民などへの理解も進んで行くものと考えています。
若い漁業者がこういった問題意識や思いを持ち、行動に移したいと考えていることは素晴らしいことだと思います。ぜひとも今後の活動へと繋げていただくことを期待しております。