静岡県の玉ねぎ農家の56歳です。
最近、私の周りでも安心安全な農作物を求める声が高まってきました。
もし、今のうちに土壌診断を活用しながら、環境負荷の低い肥料を施肥(せひ)できたら、人気が出るのはないかと考えています。
そこで、牛、豚、鶏、馬など家畜の糞の堆肥で土づくりをして有機栽培ができたら、うちの農園の売りになるのではないでしょうか。
ペレットや混合堆肥だと、それぞれどんな利点や土壌改良効果があり、どんな作物によいのか知りたいです。
また、仲間から聞いた話では、大学の馬術部から馬糞を譲ってもらったり、大学敷地内の落ち葉を譲ってもらったりなどのケースもあるそうです。
入手方法や扱い方も含めてアドバイスをください。
(静岡県・岸さん/仮名・56歳)
櫻井杏子
株式会社INGEN 代表取締役
畜産農家で発酵済みのふんが購入できます!購入の前には発酵の工程などに注意を
まず家畜のふんですが、鶏ふんは石灰が多く、馬ふんは窒素やリン酸、カリウムが少なく、緑肥(腐らせずに土壌にすき込む植物)のような性質が強いです。豚、牛のふんには窒素やリン酸、カリウムが適度に含まれています。
しかし、ふんをそのまま使っても土壌改良の効果はないので、発酵させ「堆肥」になると効果を発揮します。堆肥用の微生物資材を使い、十分な発酵期間と発酵温度を保つことが欠かせません。発酵が不十分だと、植物に害をもたらす菌が増えたり、植物と菌とで栄養の取り合いが起きたりすることもあります。
購入する場所は、畜産農家などで「発酵済み」のふんが買えますが、発酵が十分でない場合があります。しかし、発酵に時間がかかるものを混ぜていないか、発酵の工程はどうかなどを確認して購入しましょう。
岩崎真也
農学博士、国立研究開発法人研究員
有機物の分解のしやすさは家畜で異なります。JAや酪農施設で販売している可能性も
有機物は土をふかふかにして作物に養分を与えるなどの効果をもたらしてくれるのですが、作物が育成、収穫されるたび、有機物などは土から減っていきます。
つまり、有機物が減少するということは、土壌が劣化しているということであり、堆肥などの有機物で補うことが有効になるのです。
また、堆肥により化学肥料の量を抑えることで、化学肥料過多による土壌の酸性化や水の汚染も予防できます。
堆肥は原料を腐熟(発酵)させて作り、家畜のふん尿と、稲わら、麦わらなどの配合が、養分のバランスを左右します。有機物量(炭素)が多く、窒素やリンなどが少ないと、土でゆっくり分解され、土壌改良効果が大きくなります。
反対に、有機物量が少なく窒素やリンなどが多いと速く分解され、作物へ養分を供給する効果が大きくなり、土壌の改良効果は小さくなります。
一般的に、分解のしやすさは鳥>豚>牛>馬、稲わら≧麦わら>マメ科です。
JAなどが主催する堆肥センターや、地域の酪農施設に問い合わせることで入手できますが、地域や自治体によって状況は異なるので、確認してみてください。