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エリンギの種菌の植え付け作業はどうやってやればいいの?

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エリンギの種菌の植え付け作業はどうやってやればいいの?

多品目の野菜を育てていますが、近くの米農家さんが廃業するというので、水田も借りて稲作をはじめました。

そのタイミングで息子が農業を手伝ってくれることになったので、最近は少し余裕が出てきています。

そのため、新しくきのこ栽培も始めてみようかと思い、エリンギについて調べています。

エリンギを栽培するにあたり、種菌の作業が重要になってくると思うのですが、初心者でもうまくやれるものでしょうか?

うまく接菌する方法や気をつけるポイント、コツなどがあれば知っておきたいです。

大賀祥治

九州大学 名誉教授、中国吉林農業大学 教授

エリンギの植菌はクリーンな施設内で迅速に行うのがポイント

エリンギ栽培の流れ


エリンギはもともと日本に自生しておらず、菌床栽培技術の普及により育てることが可能になったキノコです。現在流通しているものはすべて人の手で栽培されたものです。

エリンギ栽培のおおまかな流れは、以下のようになります。

1、培地の準備
2、培地の殺菌・放冷
3、種菌の植え付け
4、培養
5、発生・収穫


種苗法により、キノコの種菌は自家増殖できません。したがって、エリンギ栽培を始めるには、外部から種菌を仕入れる必要があります。

種菌を選ぶときは品種の栽培条件をチェック


エリンギには、種菌メーカーなどが開発したさまざまな品種があります。

品種によって、大きさや瓶1本あたりに発生する本数、株ごと収穫するか1本ずつ収穫するかどうかなどが異なります。

培養に必要な日数にもばらつきがあります。

また、温度や湿度、炭酸ガス濃度などの栽培環境の必要条件が品種により違いますので、選ぶ際にしっかり確認し、守りましょう。


エリンギの種菌はどこで入手できる?


エリンギの種菌は、種菌メーカーやJA、ホームセンターなどから仕入れることができます。

農家で培地(ばいち=キノコが育つ土台を人工的に作ったもの)を用意して仕入れた種菌を植え付けます。

培地を用意せず、瓶に入った状態の培地を仕入れて育てるエリンギ農家もあります。


エリンギの種菌を植え付ける方法


エリンギの種菌の植え付けは、温湿度がコントロールされ、雑菌が入り込まないようにしたクリーンな施設の中で行ってください。

培地を詰めた瓶の中に、1本ずつ種菌を植え付けます。瓶は容量が800~1000ミリリットル、ポリプロピレン素材のものを使うのが一般的です。

あらかじめ培地に穴を開け、そこに種菌を入れ込み(=接種)します。


植菌作業の注意点


エリンギを始め、キノコの菌床栽培で最も気をつけなければならないポイントは「雑菌を混入させないこと」、そして「雑菌が入らない場所を用意しておくこと」です。

培地は植菌を行う前に必ず殺菌・放冷の工程を設けましょう。

殺菌専用装置に瓶を入れ、一定の温度と圧力を加えて、培地の中の雑菌を完全に死滅させます。

その後、クリーンな場所で常温程度になるまで培地を冷まし(=放冷)、菌の植え付工程に移ります。

植菌を行う場所も、瓶の中に雑菌が入り込まないよう、清掃して清潔を保ってください。

また、瓶の蓋を開ける時間が最小限で済むよう、植菌作業はできるだけ速やかに行うように心がけましょう。

スプーンなどの道具を使う場合は、火で炙ったりアルコールで拭くなどで十分に消毒してください。作業者の手や衣服からも雑菌が入らないよう、こまめな消毒を習慣にしましょう。


種菌を植え付ける培地の準備


続いてエリンギの種菌を植え付ける培地について、準備の手順を詳しく説明しましょう。

培地の原料


培地の準備は野菜栽培における土づくりに相当する重要な作業です。原料の選び方や配合はエリンギの品質を左右するので、エリンギ農家は最適な培地づくりを研究しています。

培地には、基材(土台となるもの)と栄養分を与えるもの、2種類の原料が必要です。基材によく使われるものには、以下のようなものがあります。

・おがくず
・コーンコブ(とうもろこしの芯を乾燥・粉砕したもの)
・コットンハル(綿実を粉砕し油を搾った後に残るかす)

栄養分としては、おから、ふすま、米ぬかやゲンキノコ(ビールの搾りかす)、ネオビタス(ウイスキーの搾りかす)などが使われます。地域の農産品の搾りかすなどを使って工夫するのも良いでしょう。


培地の作り方


これらの原料と水を一定配合で混ぜ合わせて、800~1000ミリリットルの瓶に詰めます。

培地の充填(じゅうてん=詰めること)量は、850ミリリットル瓶を使う場合、500グラム前後が適当です。

配合は、基材に対して栄養分を15%程度にするのを目安とします。


植菌後の菌かきが栽培のポイント


菌の植え付け後、品種に適した条件に温湿度などを整えた空調施設内で、約30~45日間培養(=容器の中の菌を繁殖させること)します。

培養後は「菌かき」という工程を行いましょう。

菌かきはなぜ必要?


菌かきをしなくてもエリンギは発生します。

しかし、そのままだとバラバラの方向に芽を出して形が悪くなったり、最悪の場合は伸びすぎて栽培室の環境に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。

エリンギが芽を出しやすくするのにも菌かきは有効です。


菌かきの手順


瓶の蓋を外し、表面にある菌糸を1センチメートル程度、スプーンなどの器具で上からかき取り、除去します。

菌かきの工程においても、清潔な場所での迅速な作業を意識してください。


また幼子実体が無数に発生してくるので、間引きすることが必要になります。大きくしたいものを2、3本残して、あとはハサミやナイフで切り取ってしまいます。


エリンギの植菌・培養のコツやポイント


エリンギに菌を植え付けて発芽するまでの工程で最も重要なポイントは、「雑菌を混入させないこと」です。

植え付け前に培地をしっかり殺菌すること、瓶の蓋を開ける植え付け・菌かき作業はクリーンな室内でできるだけ速やかに行うことを心がけましょう。

栽培室、作業室は菌や害虫が入り込まないよう清掃を徹底し、使う道具や身に付ける手袋、衣服などが媒介しないよう、こまめな消毒をおすすめします。

このお悩みの監修者

大賀祥治

九州大学 名誉教授、中国吉林農業大学 教授

農学博士。専門は、きのこ学、森林資源学。とくに食用・薬用キノコの生理特性や生産技術、森林の木材腐朽菌および菌根菌を研究し、九州大学発ベンチャー企業「株式会社マッシュピア」「ヒマラヤンバイオ・ジャパン株式会社」の各々会長、代表も務めている。

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