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エリンギの菌床栽培の方法が知りたい。どのように育てればいい?

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エリンギの菌床栽培の方法が知りたい。どのように育てればいい?

自分の圃場では野菜を中心に栽培していますが、最近近くの農家さんから農地を借り受けることになりました。

その農家さんは、きのこ専用のハウスも所有していて、こちらも貸してくれるそうなので、きのこの栽培も行なってみたいと考えています。

中でもエリンギの栽培に魅力を感じているのですが、いままで菌床栽培をやったことはなく、初心者でもはじめられるのか不安です。

エリンギ栽培のスケジュールや生産方法、必要な設備などについて、教えていただけませんか。

大賀祥治

九州大学 名誉教授、中国吉林農業大学 教授

エリンギ菌床栽培は作業負荷低めで、施設があれば始めやすい

エリンギは施設内の軽作業で栽培できる作物


エリンギは1990年代に日本に伝わった新しいきのこです。

国内に流通するエリンギはすべて施設内で栽培されたもので、日本に野生のエリンギは存在しません。

施設内で空調栽培(=空調機で温湿度などの環境を調整する栽培方法)により、年間を通じて生産・出荷されています。

きのこ類は菌床(きんしょう)と呼ばれる環境を用意し、そこに種菌を植え付けて人工的に発生・収穫することから、「菌床栽培」とも呼ばれます。

天候にも左右されず、屋外での作業が必要なキノコ類や野菜と比べると、比較的軽作業で出荷できるのが特徴です。

原木栽培の可否についてはこちらをご覧ください
エリンギは原木栽培が可能ですか?



エリンギの概要


エリンギはヨーロッパ原産のヒラタケ科のきのこです。

現在国内で生産されているエリンギはすべて人の手で栽培されたものです。日本で自生しているエリンギを見ることはできません。

日本へは1993年に伝わり、愛知県で栽培が始まりました。生産が盛んなのは長野県と新潟県で、両県で国内シェア7割以上を占めています。


エリンギの育て方


まずはエリンギの栽培スケジュールと栽培環境について説明しましょう。

エリンギの栽培時期と必要な環境


エリンギは施設と空調設備があれば、年間を通じて栽培できます。

最適温度は14~20℃で、湿度は90%以上を保つ必要があります。

栽培室には、温度・湿度を管理・調整できる空調設備のほか、高湿度空間を作るための加湿器、エリンギが出す二酸化炭素を排出するための換気装置などが必要です。

また、棚を組んでビンを並べると、効率的な大量生産が可能です。

栽培室は、空いているハウスや倉庫を活用するのがおすすめです。コンテナで栽培する農家もあります。


培地の準備・仕入れ


野菜栽培で土壌の整備をするように、きのこの空調栽培ではまず「培地(ばいち)」を準備します。

培地には、ベースとして以下のようなものがよく使われます。
・おがくず
・コーンコブミール(とうもろこしの芯を乾燥・粉砕したもの)
・コットンハル(綿実を粉砕し油を搾った後に残るかす)

また、さらに栄養分を加えるために、以下のようなものがよく使われます。
・おから
・ふすま
・米ぬか
・ネオビタス(ウイスキーの搾りかすを利用した資材)

これらに水を加えて培地を作ります。

平行して、培地を詰める容器を用意しましょう。800~1000ミリリットル程度の容量のポリプロピレン素材の瓶を使用するのが一般的です。

上手に育つと、瓶1本あたり140~180gほどのエリンギが収穫できます。

施設や配置する棚の面積、目標収穫量などから逆算して本数を決めましょう。

また、すでに完成した培地をメーカーなどから仕入れる農家もあります。自分で調合する手間を省くことで、効率的に栽培を始められます。


殺菌


培地を詰めた容器(=菌床)に種菌を中に植え付ける工程の前に、菌床を必ず殺菌してください。

エリンギなどきのこ類の栽培は、培地で菌糸(きんし=きのこを構成する菌の糸状の構造のこと)を増やす作業です。

したがって培地を入れた容器に別の菌が混入すると、エリンギがうまく育ちません。

容器ごと専用装置に入れて高温・高圧を加えます。温度は120℃が目安です。

殺菌を終えた菌床は、常温の20℃前後になるまで放冷します。ここでも不要な菌が入らないよう、細心の注意を払いましょう。


植菌(接種)


キノコの種菌を植えることを「植菌(しょっきん)」と呼びます。また、「種を注入する」という意味で「接種」と呼ぶこともあります。

雑菌が混入しないよう環境を整えて、各々の菌床にエリンギの種菌を注入します。

種菌の植え付け作業についてはこちらをご覧ください
エリンギの種菌の植え付け作業はどうやってやればいいの?



培養管理


野菜の植え付け後は水やりや日照などの「栽培管理」が必要ですが、植菌後のキノコ栽培で最も重要なのは温湿度管理です。この工程を「培養管理」といいます。

環境を整えて、容器の中の菌を繁殖させます(=培養)。

培養室の温度は18~22℃、湿度は60~80%前後に保ちましょう。栽培前期と後期とでは湿度を変え、後半は10%ほど湿度を上げてください。空間はできる限り暗くします。

培養期間は30~45日間が目安です。


菌かき


「菌かき」は、培養中の菌のうち老化した部分を少量掻き出して取り除き、培養中のきのこの形を整えたり、成長しやすいよう調整するための作業です。

菌かきを省略しても収穫は可能ですが、バラバラな方向に伸びてしまったり、培養室の環境を汚染してしまったりする事態を招く可能性があります。

培養により瓶全体に菌糸体が蔓延したら、瓶の口の表面部分をスプーンなどの清潔な器具で1センチメートルほど取り除きます。


発芽・摘果(間引き)・生育


その後、室温14~15℃前後、湿度70~95%に調整された場所に移動します。

品種にもよりますが、種菌の植え付けから40日ほどでエリンギが発芽します。

無数にある芽から2〜3本を残して、それ以外は摘み取ります。

15~18日間ほどで収穫できるサイズまで成長します。


収穫・包装


カサに丸みがあり、地面に対し水平になっている状態が理想的です。

根元から切り取って収穫し、販売用パッケージに包装します。

水が付着するとそこから傷み始めますので、水分に注意しながら作業を薦めてください。


エリンギによくある病気や栽培上のトラブル


最後に、エリンギの病害虫について説明します。

エリンギによく発生する病気、害虫


虫はダニ類、ハエ類からの被害に気をつけましょう。

特にキノコバエ類はキノコなど真菌類を好んで食害し、ヒダの部分に巣を張って、クモノス病をもたらします。


変色・変形・カビ


発芽したもののエリンギ本体に変色やカビが見られる場合、種菌以外の雑菌や害菌が入ってしまった疑いがあります。

どの工程でも栽培環境を清潔に保つことが一番の対策です。

二酸化炭素濃度が高すぎると、エリンギの変形が起こる確率が上がります。生育時に十分に換気するようにしてください。

カビが原因と考えられるエリンギの病気、症状についてはこちらをご覧ください
エリンギにカビが付くとどうなる?症状と対策について教えて

このお悩みの監修者

大賀祥治

九州大学 名誉教授、中国吉林農業大学 教授

農学博士。専門は、きのこ学、森林資源学。とくに食用・薬用キノコの生理特性や生産技術、森林の木材腐朽菌および菌根菌を研究し、九州大学発ベンチャー企業「株式会社マッシュピア」「ヒマラヤンバイオ・ジャパン株式会社」の各々会長、代表も務めている。

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