脱サラし、故郷の埼玉県で新規就農した40代です。
農地を借りて土づくりをするところから5年が過ぎました。この間、たくさん失敗もしましたが、何とか続けてこられました。
今は、年間を通して季節に応じた野菜を栽培しています。
自然農薬を用いる事と、不耕起栽培(農地を耕さず栽培する事)にも挑戦しており、今後は作物で新たに加工販売ができないかと考えているところです。
気がかりなことは、いくつもあるのですが、そのうちのひとつが「老後の不安」です。
農業には定年というものがありませんし、身体が動く限りは畑に出るつもりです。
ただ、将来どうなるかはわからないですよね。
そんなおり、妻から「農業者年金」に加入しようと言われました。
畑の経理関係はもちろんのこと、税金や保険のことなど数字関係には弱いので、これまで妻の助けなしにはやってこられませんでした。
情報収集力に長けた妻のアドバイスは信頼しており、言われた通りに加入するつもりですが、どんなメリットがあるのでしょうか?
自分の年金は国民年金で第一号被保険者のようです。現在の年金と何が違うのが教えてください。
(埼玉県・早川さん/仮名・44歳)
K.K.さん
元JA職員
手堅い農業者年金と併せ、JAの年金共済の併用を検討しては?
結論から言うと、農業者年金に加入した方がよいと思います。農業経営する本人だけでなく、配偶者や後継者など、農業従事する家族も加入できます。
加入には条件があり、「年間60日以上農業に従事」「国民年金の第一号被保険者である」「60歳未満」の3つです。
農業者年金のメリットは、「元本割れしない」「直近10年の平均運用利回りは年率4.54%(令和3年6月末時点)」「65歳以降は終身で受給できる」「保険料は全額社会保険控除となり節税できる」「運用益は非課税」「受け取る年金も公的年金等控除の対象となり、110万円までは全額非課税、死亡一時金は非課税」「保険料は2万円~6万7千円の間で自由に決められ、途中で増額・減額ができる」「条件付きで保険料の国庫補助がある」など、たくさんあります。
デメリットは「契約途中で引き出せない」「まとまった金額として受給できない」「iDeCo(個人型確定拠出年金)との併用ができない」などです。
したがって、安定して運用し、一生年金を受給したいなら農業者年金+国民年金基金を。元本割れのリスクなどがあっても積極的に運用したいならiDeCoが向いています。
注意したいのは、農業者年金を60歳で繰り上げ受給する場合、60歳~64歳および65歳以降の年金額が一生減額されます。
そのため60歳~65歳に受け取る年金は、できるだけ貯金するか長く働く、もしくはJAの年金共済などでこの間の生活費をカバーするなどが望ましいでしょう。
ただ、個人年金保険料控除が受けられ、いざという時に年金共済の積立を担保として、積立額の80%まで融資を受けられるなどの機能は、JAの年金共済ならではの強みです。
60歳~65歳までの年金を充実させつつ、65歳以降の農業者年金も一生涯満額で受給できるよう、農業者年金とJAの年金共済の併用を検討してはいかがでしょう?