香川県でレタス、ブロッコリー、タマネギなどの野菜を生産してきました。すでに還暦は過ぎていますが、まだまだ元気です。
残念ながら後継者はおりませんが、これからも好きな農業を妻と2人で無理なく続けていきたいという希望を持っています。
収入は多くを望んではいません。年金もありますので、150万円程度の収入があれば充分に暮らしていけます。
そこで目をつけたのが唐辛子です。世の中は辛いものブームが続いています。一般的な「鷹の爪」や地元では幻と呼ばれている「香川本鷹」、激辛で知られる「ハバネロ」などの生産に挑戦してみようかと考えています。
唐辛子は病害虫の心配が少ないと聞いていますし、肉体的にも負担が少ないような印象です。とはいえ、実の摘み取り、天日干しの作業などは非常に手間がかかる気もします。
できるだけ無理はしないつもりですので、現時点では加工品の販売などまでは手を広げようと考えていません。唐辛子農家の現状を詳しく知りたいです。無理なくできる方法のアドバイスをください。
(香川県・高橋義雄さん/仮名・60代)
香川県西讃農業改良普及センター
香川県西讃農業改良普及センター
なすやピーマンを育てた人なら、唐辛子の生産は難しくない
唐辛子を育てるにあたって、病害虫の問題もそれほど難しくありません。実際に肉体的な労力が必要になるのは、赤く熟れてから乾燥させる作業です。天日干しによる自然乾燥では品質が揃いません。
そのため、粉末状に加工して出荷している農家さんでは、食品野菜乾燥機(ラボネクト社製だと7段乾燥で27万円ほど)を導入し、除湿乾燥してからパウダー状にして販売しています。
地元食品メーカーや産直サービス(生産者が消費者に直接販売するインターネットサービス)などの小規模直販をする農家さんでは、ホール(粉末にしない)のまま販売しているところもありますが、乾燥ネットや陰干しなどで乾燥が不十分だと、袋の中で痛みが起こりやすいので注意が必要です。
ただし唐辛子の場合、販売面で大きな課題があります。海外産の安い唐辛子との競争が厳しいという現状があるのです。国内での唐辛子に対する需要は高いのですが、価格競争となると生き残るのが大変になってきます。そこで必要なのが、ブランドです。
輸入品に押されていた唐辛子ですが、一般的な唐辛子よりも約2~3倍の大きさで、旨みのある強い辛味が特徴の「香川本鷹(かがわほんたか)」は好評です。
ブランド性や希少性を守るためにも県外への持ち出し及び、県外農家への販売は行なっておらず、厳しく管理していますが、香川県の農家さんには前向きに提供しています。
村山晋作
Peppers.jp
唐辛子を扱うなら、個人よりグループでの生産も視野に入れてみて
「唐辛子は実も軽くて収穫作業の負荷も低いので、高齢者でも扱いやすいのではないか?」と農水省の方から質問されたことがあります。鷹の爪などの唐辛子を手摘みで収穫するのであれば確かにその通りでしょう。
私は、群馬県安中市の自社農園で、ハラペーニョやセラーノ、ハバネロなどの唐辛子のほか、食用ホオズキのトマティージョやハヤトウリなどの販売を行なっていますので、他の地域での乾燥方法はあまり知らないのですが、知っている範囲でご説明します。
栃木の大田原で栽培されているブランド「栃木三鷹」の場合、春先に植え付けた唐辛子の株を10月の実が熟したころに株元10㎝ぐらいで切り倒し、数株を紐でまとめて風通しがよく雨に当たらない日陰に吊るして乾燥させていました。
もしも、1つずつ実を摘み取ってから乾燥する場合には、平カゴか干し網に広げて乾燥させることになると思いますが、実が重なって上手く乾燥が進まなかったり傷んでしまう恐れがあります。
さらに乾燥させるためのスペースもかなりの広さが必要となります。作業を見る限り、実を摘み取って乾燥させる場合には、費用はかかりますが乾燥器を使う方が効率がよいです。
また、株ごとに吊るして乾燥させる場合もあります。実の間隔も適度に空いており、枝や葉からも蒸散(水分は蒸発すること)が進むので、比較的よい状態で乾燥させることが可能です。
ただし収穫のタイミングとしては晩秋の1回のみとなり、乾燥には2〜3カ月月かかかるので、乾燥唐辛子のみで収入を得られる機会はかなり限られたものとなってしまいます。
乾燥唐辛子以外でも収入を得たい場合には、ある程度育った段階で葉唐辛子として出荷するか、青唐辛子や生の赤唐辛子として出荷することも可能ではあります。
唐辛子の乾燥方法や品種選び含め、どういった形で出荷するかを決めることが重要です。最近では唐辛子を使った特産品を作って売り出そうとしている自治体も多いようです。
個々で行うよりもある程度の人数を集めて栽培や加工、販売を行っていった方が大きな負担がなく収入を得られるような気がしますよ。