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参加型保証システム(PGS)は有機JAS制度とどう違うのでしょうか?

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参加型保証システム(PGS)は有機JAS制度とどう違うのでしょうか?

脱サラして農業大学校で2年間学んだあと、有機JAS認証を持つ露地野菜農家で2年間研修し、今年から就農する予定です。

農業大学校で学び始めた頃から有機農業を目指し、就農したら有機JAS制度に認定されるのを目標にしてきました。

しかし、研修先で現場を見てみると、作物の品種ごとに記録を取らねばならず、膨大な事務作業や認証を受けるための費用がかかることから、有機JAS制度の取得に躊躇しています。

最近、新聞で有機JAS制度と同じような「参加型保証システム(PGS=Participatory Guarantee Systems)」という制度があることを知りました。

有機JAS制度に比べて検査項目が少なく、費用もかからないそうですが、日本では馴染みがなく、PGSに詳しい人が周りにいません。

有機JAS制度とどう違うのでしょうか?
(茨城県・根本正則さん/仮名・40代)

小宮菱一

オーガニック雫石 副代表 イーハトーブファーム

単なる有機農産物の認証ではなく、有機農業を核とした地域づくりの手法です

有機農産物の認証については、その生産や一連の管理および表示等について、IFOAM(国際的NGOの国際有機農業運動連盟)が中心となって各種の標準規格を作成し、それに沿って各国の有機農業団体や政府が詳細な規格を作っています。

その一番もとになる「国際基準」は、国連機関であるFAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)合同による食品規格委員会が策定した「有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン」です。

日本でもこれを元に「有機JAS規格」が制定されています。

有機JASにはJAS法に基づく有機JAS検査認証制度(第三者認証制度)があり、国が認定した認証機関が生産者の圃場を確認して認証します。

一方、IFOAMが推進する有機認証の仕組みである「PGS(参加型保証システム)」は、PGS活動(有機生産者と有機生産物に興味のある個人・団体・事業者などを核として展開する食・農・環境にかかわる継続的な各種活動)を行う世界中の有機生産者から提出されるSELF EVALUATION FORM(自己評価様式)を、IFOAM PGS委員会が厳正に審査し、その内容が認められれば、「IFOAM Recognized PGS Initiatives」であることを認定します。

2022年5月現在、世界76カ国にわたって運営されている223のPGSのうち(2019年現在のデータより)、IFOAM Recognized PGS Initiatives認定を受けているのは、アメリカ、フランス、ニュージーランド、スリランカ、フィリピン、ベトナム、ナミビア、ニューカレドニア、フランス領ポリネシア、日本の10ヵ国のみになります。

有機JASもPGSも、最終的な目的は生産物が有機であることを認証することには変わりはありませんが、そのアプローチの仕方に違いがあります。

PGSは有機農業を核とした地域づくりの手法であり、主なテーマは「有機食材に興味を持つ人々や事業者を増やすこと」と「自然環境の保全」です。

その点をポイントに、IFOAMに正式に認定されたそれぞれのPGS Initiativesが、その地域で生産された有機農産物を認証するわけです。

次に、具体的な数字で有機JASとPGSの違いをご説明します。ただし、これらはあくまでも2018年にIFOAMから公式認定を取得した当社の実例にもとづくものです。

まず諸経費はは地域によって異なりますが高いところで、、有機JAS検査認証が初年度は22万円+α、次年度以降は17万円+αであるのに対して、当社のPGSは初年度、次年度以降ともに7,500円+α程度です。

また、提出資料に関して様式の未記入のページ数で比較すると、有機JAS検査認証は応募様式が23ページ、農場調査書様式が16ページですが、当社のPGSはそれぞれ11ページ、6ページと、圧倒的に事務負担も軽くなっています。

ただし、PGSは経済的コストや事務的コストは低いのですが、書類を提出した後に、IFOAM Recognized PGS InitiativesとしてIFOAM PGS委員会に認定してもらうまでに時間がかかります。

IFOAM PGS委員会からPGS認定を取得するまでに、最短1、2年はかかります。当社は2016年に申請し、認定までに約2年を費やしました。

もちろん認定後は、JASと同様にPGS Initiativesの認証を毎年1度ずつ実施します。

また、PGSは有機JASとは異なり、認証を受けても「有機農産物」であることを表示することはできません。表示に関しては。それぞれのPGS Initiativesが作成する独自のロゴで表示することになります。

ただし、PGSの正式ロゴ「IFOAM PGS LOGO」は、名刺やバナー、レターヘッド、WEBSITE、ポップに関して使用できます。

PGSはあくまで地域を主体に考え、人と人との密接な結びつきにより、各地域で有機農業を推進します。

それとともに、有機産品・加工品を使用するホテルや学校給食センター、アグロツーリズムを企画する旅行会社、B&B、レストラン、産直団体、店舗などの協賛を得て、地域の活性化を図り、有機農業のファンをつくっていく重要な役割を担っています。

そのため、PGSは地域の中で小規模に家族農業を行う農家にとっては、単に有機認証を取ることにとどまらず、地域と有機食材を使う各種事業者の共生・共存も進められる仕組みであるといえます。

もちろん、これを実現するためには地方自治体のサポートが最重要であるのは言うまでもありません。

本格的に有機農業に参入したいとお考えであれば、ぜひIFOAM Recognized PGS Initiativesの取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。

当社ではIFOAM Recognized PGS Initiatives取得の相談に乗るだけでなく、全国を縦断した打ち合わせ会も行っています。

当社の事例に基づいた認証取得のノウハウについて網羅した内容となっていますので、こちらにもぜひご参加ください。

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