うちは代々続く農家で、現在は野菜や山菜、果樹栽培と手がけています。
最近「農作物のブランド化」という言葉をよく耳にします。
私が住む地域でも、昔から梅やゆずが特産品として有名ですが、あくまで近隣エリアだけです。
「夕張メロン」「神戸ビーフ」など全国区の知名度になっているものもあるので、うちの作物もブランド化させたいと思い調べていたところ、「地理的表示保護制度(GI)」という制度があると知りました。
地理的表示保護制度は知的財産として登録された名称とのことで、こうした公的制度の後ろ盾があると、心強いのではないかと考えています。
でも、地理的表示保護制度で登録されても、それで安心というわけではないようです。
先日の新聞記事で「八丁味噌」の登録をめぐってのトラブルが続いていることも知りました。
制度への登録を目指す前に、ちゃんとメリット、デメリットを知っておきたいです。
また、不正利用された場合には、どういった対応をすれば良いのでしょうか?
(埼玉県・小山さん/仮名・50代)
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
知的財産分野は難解 弁理士などの専門家への相談が得策です
地理的表示保護制度(GI)だけでなく、知的財産については難解であり専門的な知識が必要です。
こういった商標は侵害されるだけでなく、気づかぬうちに侵害していることもあるので注意が必要です。
「特許・実用新案、意匠、商標」については「J-PlatPad」で調べられますので、自分がつけたい商品名を、どこかが商標として取得していないかチェックすることができます。
一方で、不正使用等の侵害については明確にこうしたらいいという対応策はなく、難しいのが現状です。
とくに相手が故意に侵害している場合があります。そういった相手はそのブランドに便乗して商いをすることに長けているので気を付けなければなりません。
また侵害をされた場合は訴訟をすることになりますが、訴訟費用や対応に割く時間まで考えて対応を考えなければなりません。
この分野に詳しいのは弁理士なので取得や侵害については相談することをおすすめします。
松田恭子
株式会社結アソシエイト 代表取締役
地域ブランドの確立には、生産者の合意形成がジレンマになることも
ブランドの作り方として、地域と自社の2通りが考えられます。
地域団体商標や地理的表示保護制度(GI)は、どちらも地域ブランドの知的財産を守る制度です。
GIは地域と関連する名称について、地域共有財産として保護するものです。
その地域の範囲、産品の品質や評価などの特性、その特性に影響を与える地域の自然条件や伝統的な生産方法を定め、登録団体の全メンバーが約束事として合意・管理する必要があります。
私はGI相談窓口のアドバイザーをしていますが、この合意形成には時間がかかります。
ルールを守らなければその名前で販売できませんが、多く販売するために基準を低くすると他の産地との差別化が図れません。
歴史があり生産者が多いほど、利害もぶつかります。老舗は伝統製法以外を認めたくなくても、地域外に共通の敵が増えれば、地域共有の財産を守るため合意する場合もあります。
しかし、厳しい基準で努力してきた生産者の中に、皆が守れる基準に不満を持つ方がいれば、同じ名前での合意は困難です。ブランド化へのこだわりは、簡単に妥協できないものなのです。
「それならばまず自社ブランドを守ろう」と考える場合、商標登録を検討する選択肢があります。商標などの知財に関して専門家に相談できるワンストップの「知財総合支援窓口」があります。無料の個別相談サービスもあるので、問い合わせてみてください。