鹿児島県でピーマン、トマト、なす、絹さや、インゲンなどの野菜を育てております。
毎年のことですが、ナスミバエの被害に悩まされています。
防虫ネットでの侵入防止と農薬散布で防いでいますが、なかなか思ったようにいきません。
最近では「ツマジロクサヨトウ」「ミカンコミバエ」などが発生し、さらに被害が拡大してしまうのではないかと心配しています。
とくにここ数年は雨が多いのも悩みの種です。せっかく農薬散布しても雨で流れ落ちてしまいます。
結果的に効果が長続きしないことになるので、被害が増えています。
だからといって散布の回数を増やすわけにもいきません。
そこで、いい展着剤を探しています。
いままでは品目に合わせた一般展着剤(農薬をはじきやすい作物に付着させるための薬剤)を使っていたので、展着剤の基本的な特徴もちゃんと把握していません。
展着剤の種類や特徴を教えてください。
もし可能でしたら、ナスミバエ被害の対策に効果的な農薬と展着剤の組み合わせを教えてほしいです。
(鹿児島県・松元祐二さん/仮名・40代)
丸和バイオケミカル株式会社グループ
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展着剤は3種に大別できます。耐雨性の向上なら「固着剤」がおすすめです
展着剤は使い慣れたものをそのまま使い続ける場合が多いので、ベテランでも特徴を詳しく把握されていないことが少なくありません。まずは基本的なことからご説明します。
展着剤は「補助剤」という名前で分類されています。「補助」するのは、農薬の効果を安定させること。とても重要な役割を持った薬剤です。
主成分は界面活性剤(物質の境に作用して、性質を変化させる物質)です。現在、約60種類が農薬登録されており、現場で発揮される機能から「機能性展着剤(アジュバント)」「一般展着剤」「固着剤」の3種に大別できます。
「機能性展着剤(アジュバント)」は、浸透性の薬剤に加えると効果が大きくアップします。高濃度で使用し、濡れ性や付着性を改善します。
「一般展着剤」は、散布ムラをなくすために混ぜて使用します。散布液の表面張力を下げてよく広がるようにして付着性を向上させるだけではなく、水和剤と乳剤などの混用性を改善します。使用濃度は約5千倍くらいの低濃度で、作物にも影響がほとんどありません。
「固着剤」は、農薬の効果期間を伸ばすことができます(残効性に優れている)。初期の付着量や対雨性が高いので防御効果は安定し、向上しますが、リスクが高まる恐れがあります。
続いて乳剤と展着剤の組み合わせについてです。一般的に乳剤には展着剤を入れる必要はないとよく言われています。理由は乳剤にも界面活性剤が入っているからです。
たしかに「一般展着剤」や「固着剤」を添加する場合はその通りですが、「機能性展着剤」を添加する場合は異なります。
乳剤との相性にもよりますが、添加したほうが薬効が安定化・向上することがあります。難病害虫を防除する場合、散布量を減らしたい場合などには、「機能性展着剤(アジュバント)」を添加することをおすすめします。
今回のような雨で流れ落ちてしまうという悩みを解決するためには、「パラフィン」や「樹脂酸エステル」を有効成分とする「固着剤」やマシン油乳剤(鉱物油などを由来とする機械油に乳化剤を混ぜ合わせたもの)を添加するといいでしょう。付着性や耐雨性が向上することが実証されています。
さらに展着剤の詳細を知りたい場合は、川島和夫氏の『展着剤の基礎と応用 ―展着剤の上手な選び方と使い方―』などを読んでみてください。