祖父の代から茶園を営んでおり、現在、父・母・私で経営をしています。
作業効率化のために、農機具を複数導入、併せて農業用倉庫を増築しようか検討しています。
ただ、農業新聞を見ていると、「ウッドショック」と呼ばれる、外国の木材の相場が急激に高くなり、日本の木材の相場も上がっているという現象があると書いてありました。
とりあえずは農機具だけ買って、倉庫は後でもいいといえばいいのですが、職人の友人に聞くと、「今は木材が入りにくいし、価格が大体1.5倍くらいになったり、素材自体が入らないものもある、俺も今、無理しててでも建てた方がいいか、数年見て落ち着いてから建てれば良いか、正直分からん」と言われました。
建築や木材の供給に詳しい専門家のご意見を聞きたいのですが、農業用倉庫は今、急いで建てるのと、落ち着いてから建てるのと、どちらが良いでしょうか?
(静岡県・林さん/仮名・40代)
坪野克彦
フォレスト・ミッション
様子をみて、状況を見ながら、改めて方針を決めては?
農業用の倉庫の増築をご検討とのことですが、結論から申し上げますと、まず、2021年以内は様子をみて、市場の動向を見極めながら、来年以降に再度検討されてはどうでしょうか。
そもそも「ウッドショック」という現象は、メディアで報道されているように、アメリカでコロナ禍後の景気が良くなり、住宅金利が下がったこともあって、住宅新築やリフォームのブームが起こったこと。
また、中国においても住宅着工が増えて、その材料となっている、北米や欧州等の木材が一時的に品薄となり、価格が高騰したものです。
現在我が国で生産されるスギやヒノキの価格は、すでに、外材の値動きと連動して上がったり下がったりする「国際価格」となっています。
それゆえ、アメリカなどで価格が高騰したので、日本でも実際の需要のあるなしに拘わらず、木材価格が上がったということです。
大手ハウスメーカーなどは、一部のメーカーを除いて、外国の木材を使用し、我が国で建築用に使われる木材の約50%弱は、いまだに外国の木材に依存しています。
それが、コロナ禍による貨物船の往来も激減したこともあり、入ってこなくなったので大騒ぎとなったのが、ウッドショックと呼ばれる現象です。
我が国の林業も、森林資源の成熟に伴い、機械化などを進めて木材自給率も一時期の20%から40%近くまで上がってはいます。
ただ、植えて育てて伐採する期間が長いということで、急激な需要増には対応できません。そのため、木材の品薄と値上がりという現象になっています。
当初も申し上げましたが、バブルという現象は、やがて弾けるものです。記憶に新しいところでは、1980年後半の不動産や株式のバブルがいい教訓です。
我が国における木材価格の最後のピークは1980年、約40年前になります。その時点から、木材価格は約4分の1になってしまいました。
現在の日本、そして人口動態を見ると、将来人口も減り、新規住宅着工戸数も減り続けていますから、これからも、木材の価格は、これまでの水準を何とか維持していくのが精一杯とみるのが妥当だと当職のみならず、多くの専門家がそうみています。
では、いつになれば、木材バブルが弾けて、価格が元に戻るのか?
これは、海外の木材需給の動静次第です。人によって期間の特定に幅があろうかと思われますが、いずれにせよ、やがては実需に即した水準になるのは明白です。
品薄で木材が高く、また、それを仕入れる工務店にしても動きようがないというような状況も踏まえ、しばらく、様子をみられて、この状況が一定収まったころに再検討されるのがより良いでしょう。