静岡県で夏みかん、いよかんなどを中心に育てている果樹農家です。
すでに還暦を迎えており、跡継ぎの息子もよくやってくれています。
ようやく自分の時間が持てるようになると思っていましたが、地域の方々から放置竹林の相談をされました。
私が住んでいる南伊豆エリアの放置竹林は年々増えてきています。
周囲の森林への悪影響も気になっていました。そこで、放置竹林の問題を解決しようと考えています。
冬場の果樹園での仕事は、剪定作業が中心です。
息子は「オレが頑張るから、親父は竹に専念しても大丈夫」と言ってくれています。
ちょうど竹を切るに適した時期ですし、本格的に挑戦してみようと考えています。
少し調べてみると、伐採した竹を竹パウダーや竹チップに有効活用することがいいのではないかと感じています。
放置竹林の問題解決と合わせて、農業に役立てたり、地域の新しい産業としても成長させてみたいです。
そこで、費用や手間、さらに成功例などを教えていただきたいです。さらに、行政などの助成金も考えています。
どのような長期計画を立てるのがいいでしょうか?
(静岡県・中村さん/仮名・50代)
大村大輔
大測森林緑地事業部【アカリノワProject】
放置竹林はとても危険! その道のプロを巻き込むことを意識して
放置竹林の問題は全国的に増えてきています。なにより竹は成長するスピードが早いので、油断すると手に負えなくなります。
各地で有効活用の活動が行われていますが、基本的に竹切り(伐採)、搬出技術で壁にぶつかるケースがほとんどです。かなり労力を使う作業ですから。
相談者様はすでに還暦を迎えてらっしゃるようですから、これからさらに体力的にもキツくなってくるはずです。
まずは伐採技術・搬出技術のある方を仲間に入れていくことを意識してください。造園関係者など、普段はあまり接点のない人にも声をかけるといいでしょう。
さて、本題の有効活用についてです。現状ですと、竹チップ・竹炭・メンマが大量消費には向いているかと思います。それぞれの特長などをご説明します。
竹チップは土壌の団粒化には一番です。設備費用に関してはチッパー(粉砕機)で100万円前後、竹パウダー製造機では150万円前後からとなります。
高額ですが、自治体や企業によっては無料や格安でのリースもあります。まずは問い合わせてみてください。
あとはガソリン代がかかる程度ですので、さほどの金額ではありません。保存は保存用樽などもありますが、野積みで充分でしょう。
注意点は竹チップを大量に入れると、コガネムシなどの甲虫類が増えてしまうことです。地域によってはイノシシの被害が発生してしまうので注意が必要です。
竹炭はイネ科のトウモロコシや水稲には効果がはっきりと出ます。私は水稲で使用することをおすすめします。
病害虫に強く、昨年のトビイロウンカの被害はゼロでした。もちろん収量も問題ありません。果樹農家をやられているとのことですが、果樹に対しても効果はあり得るはずです。
想像するより大量に入れた方が効果が出やすいでしょう。この際、必ず雨に当てて強アルカリの灰を落としてください。
メンマについては、福岡県糸島市の日高栄治さんが知識を共有されています。糸島コミュニティー事業研究会、純国産メンマプロジェクトをご覧になってみてください。
もし助成金を申請するのであれば、まずは竹林の地権者をハッキリさせてください。放置竹林は境界が曖昧になっていることが多く、揉め事が起きる一因になっています。
思っている以上に荒廃した竹林は危険です。これだけは肝に銘じてください。僕ら林業従事者でも放置竹林は「危険!」と感じています。
あとは現場に合わせて柔軟に作業を進め、仲間の輪を広げていくことです。竹に詳しい、その道のプロを巻き込んで継続していってください。