京都府で少量多品目の栽培を行っている農家です。農地の総面積は50アールほどで、このうち20アールは露地栽培、残る30アールにハウスを立てて栽培しています。
うちの農園は慣行農法で、除草剤も毎年決められた量を使用しています。特に、畝間の除草に除草剤は欠かせません。
現在は、根まで枯らす除草剤「ラウンドアップ」を専用ノズルを使って、定植前の畝間に高濃度散布しているのですが、これ以外にも葉だけを枯らして根を残すタイプの除草剤もあると聞きました。
除草剤は、根まで枯らして長く効いてくれるものを選ぶ方がいいと思っていたのですが、葉だけを枯らして根を残すタイプの方が良いのですか?
ふたつの性能の違いやメリット・デメリットについて教えていただけませんでしょうか?
(京都府・大貫さん/仮名・50代)
松淵定之
農薬工業会 安全広報部
効果発現までの期間、持続効果、枯らす対象、使用できる作物が異なります
野菜の栽培に使用でき、根まで枯らす除草剤としては、一般的に『ラウンドアップ』などの商品名で知られる「グリホサート」を有効成分とする除草剤があります。
効き方が遅い(効果発現まで2~7日程度)ですが、雑草を抑える期間は長いです。
ほとんどの雑草を防除できますが、ツユクサやスベリヒユ、スギナなどにはやや効きにくいとされているようです。
有効成分は、土壌中で速やかに分解され、根部からの吸収がないので、すぐに後作物の播種定植が可能です。
この薬剤は、葉や茎から吸収されて根に移行し、根から枯らしていきますので、茎葉の面積が大きいほど効果が安定しますが、雑草の根まで枯らしてしまうので、大雨が降ると表土が流されやすくなるので、注意が必要です。
一方、根を残すタイプとしては、商品名『バスタ』などで知られる「グルホシネート」を有効成分とする除草剤などがあります。こちらは、散布後2~5日で効果が現れるため、前述のグリホサートより効き方が早いのが特徴です。
ほとんどの雑草に効果があり、特に頑固なスギナやマルバツユクサにも高い効果を示します。有効成分が土壌内で速やかに分解されて、根から吸収することがないので、すぐに後作物の播種や定植が可能です。
雑草の大きさに関係なく効果がありますが、散布する際には、雑草全体が濡れるようにする必要がありますので、草丈の低い時に散布した方が効果的です。
さらに、根は枯らしませんから、畦畔や傾斜地の法面(のりめん)など、地崩れを避けたい場所でも使用できます。その分、多年生の雑草は、また生えてきてしまいます。
上記以外にも播種前や定植前に利用する畑地用土壌処理除草剤というものもあります。発芽してくるイネ科雑草や広葉雑草を枯らしますが、すでに生えている雑草には効果がありません。
野菜栽培では、ペンディメタリン、トリフルラリン、リニュロン、アラクロールなどを有効成分する土壌処理除草剤が代表的です。
商品名としては、ラッソー乳剤(アラクロール)、ロロックス水和剤(リニュロン)、トレファノサイド乳剤・粒剤(トリフルラリン)があります。
これらの土壌処理除草剤は、使用方法や使用時期などは作物ごとに異なる場合があります。
また、登録のない作物には使用できませんので、使用にあたってはラベルの内容をよく確認してください。
ご相談者さまは、定植前に畝間の雑草に対して「ラウンドアップ」を使われているとのことですが、この薬剤の長所は、多年生植物の根まで枯らすこと、25倍に希釈した薬液なら、葉の一部にかかっただけで枯れるパワーを持っています。
これはつまり、薬剤が500㎖なら、希釈用の水は5ℓでリットルで良いということになります。
短所は、間違って植物の一部にでもかかった場合は、根から枯れてしまう点です。そのくせ、ツユクサやカヤツリグサなど、効きにくい草種もあるのです。
また、効果が出始めるまでに1~2週間かかり、さらに完全に枯れるまでは、そこから2~4週間ほどかかるので、気の短い人には不向きです。
ですが、良く効いた場合は1カ月くらいは何もない状態になります。この間に大雨が降ると表土が流されやすくなるので、梅雨前のご使用には注意が必要です。
「ラウンドアップ」と並んで、一般的な「バスタ」は、薬剤がかかった部分しか枯れませんから、庭木のそばで使う場合には気が楽です。効き始めも3~7日と早いです。ただし、多年草は、また生えてしまいます。
どちらがいいかはお好みですが、私はラウンドアップの高濃度散布派です。300坪の畑でも、12.5ℓを2回撒けば終わりますので、背負いの散布機で十分です。
最後に参考までに東京都が発表している防除指針から、主な除草剤が適した雑草の種類をまとめた一覧表を添付しておきます。
また、「主な除草剤の特徴と使用上の注意」をまとめたものをご紹介します。よく読んでおいてください。