高知県の西南地域でできるだけ農薬を使わない農業を実践しています。
雑草も排除するのではなく、共生する農業をモットーにしています。育てているのは旬の野菜やにんにく、生姜、玉ねぎなどが中心で、麦作りもしています。
現在の悩みは、麦栽培での雑草問題です。とくにスズメノテッポウ、ヤエムグラが広範囲に広がり、手に負えない状況になってきています。
スズメノテッポウはコンバインに絡みつき、作業効率が落ちてしまいます。ヤエムグラは麦と一緒に育つせいなのか、小さな棘が収穫物に混入することも増えています。
農薬を使っていないためか、年を追うごとに被害が拡大してきています。
このままだとどうしようもありません。できたら除草剤を使わずに雑草を防除したいのですが、それは諦めた方がいいのでしょうか。
そもそもスズメノテッポウやヤエムグラは除草剤が効きにくいという話も聞いたりします。なんとかして土壌から雑草を減らしながら共生していきたいです。
(高知県・佐々木さん/仮名・50代)
和田美由紀
雪印種苗株式会社研究開発本部
ヘアリーベッチなど、雑草対策に効果的な緑肥を導入しましょう
雑草対策に効果的な緑肥はヘアリーベッチです。
しかし、ヘアリーベッチは麦と作型がまったく同じであり、麦の休閑期にヘアリーベッチで対策を打つことができません。
そこで対策のひとつとして、麦そのものを休閑してヘアリーベッチを導入し、雑草の新たな落ちダネを減らしていくという方法が考えられます。
この時の注意点として、もしヘアリーベッチを導入する際は、開花したらすぐに細断、もしくはすき込みを行うことです。
放っておくとヘアリーベッチ自体も種をつけてしまい、その種が翌年の麦の栽培時に雑草として出てきてしまいます。
ヘアリーベッチ以外ですと、クローバ類やハゼリソウ、カラシナ類など、つる性でない緑肥でも良いと思います。
要は、雑草の生育時期に物理的に日光を遮るための被覆をしてしまうわけです。
各種緑肥のさまざまな効果や、緑肥の栽培時期などは、弊社Webサイトをご覧ください。
NPO法人 緑地雑草科学研究所
NPO法人 緑地雑草科学研究所
有機物のマルチングは非常に有効ですが、安全なものを入手しましょう
除草剤を使用しないという前提で考えると、有機物のマルチングが取り得る手法と考えられます。
スズメノテッポウ、ヤエムグラなどの冬雑草については植物発生材(刈り取った雑草や剪定枝など)を敷いて、表面を平らにならすことで防除が可能となります。
その場合、有機マルチに使用する植物発生材をどこから、誰から入手できるかが問題となります。
有機物マルチについては、『現代農業・2021年5月号〜一石何鳥!? すごいぞ、有機物マルチ』『草と緑12巻〜循環型緑地管理における植物発生材マルチの活用』(共に下記参照)が参考になります。記事のポイントをかいつまんで紹介しましょう。
「現代農業」では有機物マルチの実例と効果、さらに意外な素材(紙、古畳、竹など)の活用例などを紹介しています。
有機物マルチは環境負荷がなく、地温や湿度などの土壌環境をより安定的に保つことができ、土壌有機物の働きを損なわずに団粒構造を維持できます。
夏の雑草と冬の雑草の場合では効果の差もありますが、概ね雑草抑制作用を確認することができます。
基本的に子葉が重力ストレスを受けることで、マルチの下で枯死しやすくなるわけです。
とはいえ夏に生えやすいイネ科の雑草の中には子葉の形が細いものがあり、マルチを突き抜けて成長してしまうこともあるようです。
また、スギ、ヒノキ、赤松、ヒマラヤスギ、キョウチクトウを敷き詰めた表土では、16カ月後まで雑草抑制作用が続くことがわかりました。
非常に有効な有機物マルチですが、「草と緑(2020年12巻)」の「循環型緑地管理における植物発生材マルチの活用」には注意点も記載されています。
まず第一に病害虫に汚染された樹木の剪定枝葉を用いないことです。
つる性雑草の茎葉や多年生雑草の栄養繁殖体、あるいは種子をつけた雑草茎葉も避けましょう。
また、木質系資材を多く使うと窒素欠乏を引き起こす可能性があるようです。こういった実験の結果、詳細などは上記より確認してください。