有機農業で多品目の野菜を栽培しています。毎年、悩まされるのは畑に繁茂する雑草です。
私の場合は、畝や畝間を小型の管理機で中耕していますが、株元に生えた雑草は手で抜かないといけないので、これが重労働で本当に大変です。
最近、有機農業を行う仲間から、イネ科の緑肥作物を刈り取らずに、倒してリビングマルチとして使うと、広範囲に地面を覆ってくれるので雑草が防げて、土も乾燥しづらく、土の団粒化も進むという話を聞きました。
当然、枯れて分解すれば肥料効果もあるし、もしこの方法でうまくできれば、耕うんする手間も省けて、将来的には不耕起栽培にも行きつけそうな気がします。
ただ心配なのは、倒すだけだと折れた茎が再び立ち上がってくるような気がします。
生育のどのタイミングで倒すのがよいのか、また倒し方にはコツがあるのかを知りたいです。
(埼玉県・新井智さん/仮名・30代)
和田美由紀
雪印種苗株式会社研究開発本部
草丈が低いものや、自然に倒伏したり枯れたりする緑肥を選んでいただくことでリビングマルチとしての抑草効果を狙うことができます
畝間の除草に追われている時期は春から夏が多いと思いますので、その時期に使える緑肥作物をご紹介します。
雑草抑制のために用いられる緑肥作物に求められる特性は、早く土壌表面を被覆すること、主作物の生育を邪魔しないよう草高が低いものなどです。
1つ目は4月以降に播けるオオムギです。弊社では「らくらくムギ」という商品がございますが、特徴は、4月以降に播種することで作物体が寒さにあたらず、その影響で出穂しないまま、夏の暑さで枯死してしまうところです。
出芽や初期生育が早いことで土壌被覆が早く、7月上旬ごろからは徐々に枯れあがってきます。
出穂しないため自然草高は最大で30㎝程度です。土壌を完全に被覆するまで(播種2~3週間程度)は作業等で踏み荒らさないようにする必要がありますが、一度被覆してしまえば、盛夏時に生える雑草を、ある程度抑制することが可能です。
ただし、7月上旬ごろから徐々に枯れ上がり、8月上旬頃から完全に枯死しますが、そのあとは裸地部分で新たな雑草が発生してくる恐れがあります。
2つ目は5月以降に播種できるテフグラスです。弊社には「トップガン」という商品があります。
播種後1.5か月程度で出穂し、草丈も最大で80㎝程度にまで伸長しますが、自重で自然倒伏しそのまま畝間を覆います。一部、稔って実ができますが、ひどい雑草化に見舞われることはありません。
細茎が枝分かれる分げつが多いため、土壌を比覆する度合いが高く、自然倒伏後に踏まれることがあっても消失してしまうようなことはありません。長期間にわたって抑草が可能です。
上記2種以外にシロクローバなども候補として挙がりますが、初期生育が遅いため春播きではおすすめできません。前年度の秋に一面に播種しておき、翌春に主作物のベッド部分のみ耕起するというやり方が良いように思います。
最後に、折れた茎が再び立ち上がってくるのではないかとご心配されていますが、リビングマルチとして活躍したあとの緑肥は、枯死後に地表面と接地している部分から分解が始まり、(毎年リビングマルチをする前提で)数年かけて土壌の団粒化や土壌への養分貯留が進んでいきます。
リビングマルチ利用できる緑肥は、草高が低いもの、自然倒伏するもの、分げつが縦に伸びるのではなく、根元から広がる開帳性のあるものが選定されているため、折れた茎が再び立ち上がってくる心配はあまりありません。