5年前に農業系の大学を卒業して群馬にUターンし、父の後を継いで就農しました。
父は野菜づくりをしていましたが、私が花の栽培を学んでいたため、私の代から観賞用の花の栽培へ徐々に切り替え中です。
現在は500坪のハウスで土耕栽培して、冬から初夏にかけて切り花を市場で売っています。
酷暑がニュースになるほどの群馬なので、夏は暑過ぎてハウス内での作業がツラく、梅雨明け(7月中・下旬)から9月上旬くらいまでの間は、切り花の出荷をお休みしています。
その間の3週間ほどを利用して、ビニールハウスを閉め切ることで気温と地温を上げ、害虫や雑草を退治する「蒸し込み」を行っています。
太陽熱を利用して土壌を消毒し、秋以降の栽培の準備をしているのですが、どうもあまり効果がないような気がしています。
近くに土耕でハウス栽培をしている切り花農家がなく、相談することもできないので、より効果的な太陽熱消毒の方法を専門家の方に教えてほしいです。
(群馬県・加納さん/仮名・30代)
小沢 聖
明治大学黒川農場
土壌に有機物資材や石灰窒素を混ぜ込みましょう。土壌面をフィルムで覆い蒸し込むのもおすすめ
太陽熱を利用した土壌消毒は、太陽熱とともに微生物の発酵熱によって土壌を高温にすることで、病原菌やセンチュウなどを駆除するもので、質問者さんが言う通り一年のうちでもっとも地熱が上がる7月中旬から9月上旬頃に行うのが一般的です。
近年では、真夏には最高気温が35℃以上になる日も珍しくありません。太陽熱消毒のカギはいかに地温を上げるかにかかっていますので、この酷暑を利用して地中温度を55度以上に保つことができれば、3週間といわず2週間程度で土壌の蒸し込みを終わらせることもできます。
なお、太陽熱消毒を実施している期間中、ハウス内の昼夜の平均温度が45度以上を維持できた日が多いほど消毒効果が高くなります。
太陽熱消毒の具体的な実施方法としては、まず、有機物資材や石灰窒素を土壌に混ぜ込みながら土壌をよく耕しておきます。
有機物資材は土壌に住む微生物を増殖させて発酵熱を発生させ、また石灰窒素は土壌ph(酸性なのかアルカリ性なのかを表す度合い)を調整するとともに有機物を分解する際に熱を発生させますから、どちらも地温上昇を促進するのに役立つというわけです。
その後、熱効率が良くなるよう畝(うね)を作り、土壌の表面積を広くしておきます(畝立てしておくことで熱消毒後の排水も良くなります)。
続いて、熱の伝わりをよくするためにしっかりと土壌全体に散水します(水の量は圃場の容水量以上を目標とします)。
なお、夏のハウス内が熱いといってもただハウスを締め切っただけではなかなか地温が上がりきらず、消毒効果が期待できませんので、地熱の低下を防ぐため必ず土壌面をフィルムで被覆してから蒸し込むようにしてください。
被覆するフィルムは、熱透過性の低い塩化ビニルかポリオレフィン系がおすすめです。
センチュウ防除には、一般に3つの方法の併用が望まれます。太陽熱+ガス消毒+α」で、αは野菜だと接木が、転換畑のハウスでは湛水(水田のように水をはる)が有効です。立地条件に合った組合せをしてください。