沖縄県で、マンゴーを栽培している40代です。まだ就農して1年ちょっとのひよっこなので、教えていただきたいです。
3月くらいから、ハウス内でバッタのような見た目の虫を見かけるようになりました。
はじめは、小さくて草の上をぴょんぴょん飛び跳ねていただけだったのでそれほど気にしていなかったのですが、気付くと7~8cmくらいの大きさになり、捕まえようとすると、逃げたりこちらに突っ込んでくるようになってしまいました。
高さがあるハウスであれば、網を振り回して捕獲することもできると思いますが、私のハウスは高さがないため、そうもいきません。
何かこのような状況下で、上手に虫を捕獲できるような道具はあるでしょうか?
(沖縄県・大沼さん/仮名・40代)
管原亮平
弘前大学 農学生命科学部 環境昆虫学研究室
バッタの温床をつくらないことが先決です
バッタの生物学の研究者としてお答えします。なお病害虫は土地の気候や作物によって大きく異なるため、基本的にはその土地の農業試験場が専門的に研究していますので、この場合、沖縄の農業試験場にもぜひ相談してみてください。
ご相談の内容から、バッタの種類を特定するのは難しいのですが、体の大きさが7〜8センチと大型であることから、おそらく「タイワンツチイナゴ」か「ツチイナゴ」だと推測されます。
「タイワンツチイナゴ」か「ツチイナゴ」は姿形がよく似たバッタで、数十年前までは専門家ですら区別していませんでした。
どちらもマンゴーの主要害虫ではないため、特にマンゴーを好むわけではないと思われます。従って、マンゴーに惹きつけられて、遠くから集まってきていることは考えられず、ハウス内や周辺の下草にいるバッタが、マンゴーの木がそばにあるので、たまたま食害に及んだのではないかと思います。
どちらのバッタも、成虫で越冬する日本では珍しいタイプのバッタです。ハウス内の温度についてはわかりませんが、3月ごろから気になりだした、ということは、ひょっとしたら1月や2月は成虫が物陰に隠れて越冬し、3月になり、少し気温が上がったころに、活動が活発化し始めたのかも……。
つまり、越冬するには相談者さんのハウスの居心地がとても良かったのかもしれません。
そうした仮説を立てるとしたら、ハウス周辺の下草を刈ることで、ハウス内への侵入が減るかもしれませんし、寒さで動きが鈍くなっている大型のバッタであれば、冬場に手で捕まえられる可能性も高くなります。昆虫は人間と違って、変温動物なので、気温が低いと満足に動くことができないのです。
化学農薬を使わないその他の手段は、昆虫病原性糸状菌(メタリジウム菌)の農薬を散布する方法が考えられます。この菌に感染した昆虫は死に至りますが、残念ながらバッタによく効くものは日本では手に入らないと思います。
タイワンツチイナゴやツチイナゴは沖縄ではよく問題になる農業害虫で、防除するのは厄介ではありますが、ご相談者のケースのように、ハウス内に限った問題であれば、大型の昆虫はなんとかなるかもしれません。沖縄農業試験場の担当者ならば、詳しい情報を持っているかもしれませんが、私に言えるのはこれくらいです。
小沢 聖
明治大学黒川農場
バッタをハウス内に侵入させない対策を
バッタを駆除するための農薬は、農薬取締法に登録されているものが非常に少ないのが現状ですが、増殖すると甚大な被害を及ぼします。
まずはハウスの開口部分に防虫ネットを設置して、外からの侵入を防ぐことが肝心です。
そして、作付の切替時には植物を一掃することで飢えさせたうえに、ハウス全体の土壌面に「スミチオン乳剤(殺虫剤)」などを散布します。
多くのバッタの産卵期が秋の始めごろなので、この時期までに徹底して生息数を減らして、ハウス内で産卵させないよう徹底しましょう。